研究課題/領域番号 |
23791104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 広顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40579687)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アレルギー学 |
研究概要 |
本研究では共生細菌がアレルギー性気道炎症に抑制性に作用しているとの仮説を立て、共生細菌のいないgerm freeマウスとコントロールとしてのSPFマウスに対して、卵白アルブミンを抗原とし、水酸化アルミニウムゲルをアジュバントとしてアレルギー性気道炎症を誘発し、その表現型を比較した。仮説に反し、気管支肺胞洗浄液の総細胞数・好酸球数は両群で差はなく、血清IgE濃度も同等で、縦隔リンパ節細胞を分離して抗原(卵白アルブミン)で刺激した際に産生されるサイトカイン量(Th2サイトカインおよびインターロイキン17)も有意な差を示さなかった。続いて、もう一つの共生細菌のいないマウスのモデルとして、抗菌薬長期内服マウスを使用し、誘発されるアレルギー性気道炎症をコントロールマウスと比較した。この実験においても、気管支肺胞洗浄液の細胞、縦隔リンパ節細胞からのサイトカイン産生に有意な差は得られなかった。共生細菌は、免疫抑制性の作用を有することが近年報告されたLAG3陽性制御性T細胞(LAG3Treg)の誘導を介して、アレルギー性気道炎症に抑制性であるとの仮説を立てていたが、共生細菌によるアレルギー性炎症の抑制を示すことはできなかった。しかしながら、LAG3Tregがアレルギー性気道炎症を抑制する可能性はあると考え、その可能性について引き続き検討することとした。LAG3Tregが抑制能を発揮する機序はまだ明らかにされていない。LAG3Tregで発現が高く、その抑制能との関連が疑われる分子の一つであるBlimp-1に注目し、Blimp-1をT細胞特異的に欠損させたマウスを使用して、アレルギー性気道炎症を誘発し、野生型と比較する実験を現在進行させている所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、共生細菌がアレルギー性気道炎症を抑制する可能性と、その機序として新たに発見されたLAG3Tregが関与していることを示し、共生細菌と制御性T細胞とアレルギー性炎症に関して新たな知見を得ることを目的としていた。今回の実験で共生細菌によるアレルギー性気道炎症の抑制を示すことができなかったため、その後の実験計画の変更を余儀なくされたが、LAG3Tregの抑制能に焦点を当てて実験を進める方針とした。LAG3Tregが抑制能を発揮する責任分子の候補としてBlimp-1に注目し、T細胞特異的Blimp-1欠損マウスを使用した実験を行う予定としたが、同マウスが頻繁に腸炎を起こすため実験に使用する数を確保するのに時間を要した。当初予定していた実験計画と照らし合わせると、やや遅れていると判断されるが、前述のとおり、実験計画の変更を余儀なくされたことと、遺伝子改変マウスの確保に時間を要したことを、その理由として考えている。
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今後の研究の推進方策 |
LAG3Tregの抑制能に焦点を当てて実験を進めていく。IL-10産生低下とT細胞受容体刺激に対し過剰な応答を示すT細胞特異的Blimp-1KOマウスに対し、アレルギー性気道炎症を誘発すると、野生型マウスと比較して気道炎症がより悪化する可能性がある。その際に、KOマウスに野生型マウス由来のLAG3Tregを移入し、気道炎症が抑制されれば、LAG3Tregがアレルギー性気道炎症に対しても抑制能を発揮し、その抑制能にBlimp-1が役割を果たしていることを示すことができる。移入の時期を感作前、吸入後などに分けて行い、また感作したマウスからのLAG3Tregの移入を行うことを通じて、抑制機序がどの時期に発揮されるのかを検討する。さらにLAG3Tregの抑制能とIL-10との関連を検討するために、IL-10KOマウスを使用した実験も予定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在進行中および今後予定する実験の解析に使用する試薬や消耗品実験器具の購入、および今後予定する実験に使用するマウスの購入、学会への出張経費に充てる予定である。
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