研究課題/領域番号 |
23791104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 広顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40579687)
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キーワード | アレルギー学 |
研究概要 |
昨年度は共生細菌によるアレルギー性炎症の抑制を示すことはできなかったが、LAG3Tregがアレルギー性気道炎症を抑制する可能性はあると考え、その可能性について引き続き検討することとした。LAG3Tregで発現が高く、その抑制能との関連が疑われる分子の一つであるBlimp-1に注目し、Blimp-1をT細胞特異的に欠損させたマウス(CKOマウス)を使用して、アレルギー性気道炎症を誘発し、野生型と比較する実験を行った。 今回は気道炎症のモデルとして、前回と同様、卵白アルブミンを抗原とし、水酸化アルミニウムゲルをアジュバントとして感作させ、抗原を吸入して誘発するモデルと、新たにハウスダストを抗原として点鼻投与を繰り返して気道炎症を誘発するモデルを使用した。いずれのモデルにおいても、CKOマウスにおいてリンパ球浸潤は悪化したが、好酸球浸潤は悪化せず、むしろ抑制傾向を示した。縦隔リンパ節細胞によるサイトカイン産生も、野生型と比較して当該マウスでTh2サイトカインの産生は低下傾向を示し、一方でインターロイキン17の産生は亢進する傾向にあった。 アレルギー性気道炎症においてはT細胞のBlimp-1はTh2炎症を促進する作用があると考えられた。一方で、リンパ球浸潤は抑制すると考えられ、その意義を検証すべく、解析を追加したところ、CKOマウスでは肺組織の抗原線維が野生型よりも増加していることが判明し、Blimp-1は肺の線維化に対して抑制的に作用する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、共生細菌がアレルギー性気道炎症を抑制する可能性と、その機序として新たに発見されたLAG3Tregが関与していることを示し、共生細菌と制御性T細胞とアレルギー性炎症に関して新たな知見を得ることを目的としていた。しかし昨年までの実験で共生細菌によるアレルギー性気道炎症の抑制を示すことができなかったため、その後の実験計画の変更を余儀なくされ、LAG3Tregの抑制能に焦点を当てて実験を進める方針とした。 LAG3Tregが抑制能を発揮する責任分子の候補としてBlimp-1に注目し、T細胞特異的Blimp-1欠損マウスを使用した実験を行う予定としたが、同マウスが頻繁に腸炎を起こすため実験に使用する数を確保するのに時間を要し、その後の実験の予定が影響を受けた。その後の実験において、再び想定していた仮説(Blimp-1欠損マウスで好酸球浸潤が悪化する)と異なる結果となったため、実験の再検を要し、その分さらに時間を要することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
LAG3Tregが抑制能を発揮する責任分子の候補の一つである、Blimp-1に注目して実験を進める。Blimp-1が好酸球性炎症を抑制することは示されなかったが、リンパ球浸潤を抑制する可能性を示し、抗線維化作用も有する可能性が示唆された。 今後は抗線維化作用の作用機序について検討する。線維化に関与するとされるTGFβやCTGFなどの因子を測定し、その関与の有無を検討する。また、関与する因子についてはその産生源が何であるかと、Blimp-1との関連を考察する。Blimp1-による抗線維化作用が普遍的なものであるのか、アレルギー性気道炎症以外の疾患モデルも使用して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在進行中および今後予定する実験の解析に使用する試薬や消耗品実験器具の購入、および今後予定する実験に使用するマウスの購入、学会への出張経費に充てる予定である。
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