研究概要 |
平成23年度は、CD4陽性CD25陰性LAG3陽性 制御性T細胞(以下、LAG3 Treg)によるB細胞抗体産生抑制能評価、抑制に関わる分子の同定および、LAG3 Tregの誘導機序解明を行った。代表的な自己抗体産生による自己免疫疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)が知られている。先ず、SLEモデルMRL/lprマウスへコントロールMRL/+マウスより回収したLAG3 Treg, CD4陽性CD25陽性 Treg (CD25 Treg), Naive T細胞を移入し、経時的変化を評価した。その結果、LAG3 Tregのみ、自己抗体であるdsDNA抗体価の低下、蛋白尿および腎組織所見の改善を認めた。このことは、自己抗体産生を介した自己免疫疾患の治療応用には、LAG3 Tregの誘導が重要であることを示唆している。LAG3 Tregの誘導機序を明らかにする為、T細胞とB細胞の共通認識抗原に対する経口免疫寛容についても検討した。鶏卵リゾチーム(HEL)特異的B細胞受容体トランスジェニック(Tg)マウス (MD-4)と鶏卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体Tgマウス(OT-II)を交配し、HEL-OVAを経口投与したところ、LAG3 Tregの誘導を認めたことより、LAG3 Tregは、T細胞、B細胞の共通認識抗原により誘導されると考えられた。さらに、LAG3 Tregが抑制性分子PD-L1を細胞表面上に高発現していることを同定した。Rag1欠損マウスへB細胞およびOT-IIマウスから回収したヘルパーT細胞を移入後、OVA-NP投与により誘導されるNP特異的抗体産生をLAG3 Tregは抑制したが、PD-1欠損マウスから回収したB細胞の抗体産生は抑制出来なかった。以上の結果は、LAG3 TregがPD-L1を介してB細胞による抗体産生を制御していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、LAG3 Tregは自己抗体産生制御において重要な役割を果たしていることおよび、その分化、抑制機序までを明らかにした。当研究室は、LAG3 Tregによる抑制能が転写因子early response gene-2 (Egr2)に規定されることを報告している(Okamura,T. 2009, PNAS 106:13974-9)。近年、T細胞特異的Egr2欠損マウスがSLEの病態を呈すること(Zhu. B, 2008, J Exp Med 205:2295-307)、Egr2はSLE感受性遺伝子の一つであることが報告され(Myouzen. K, 2010, Hum Mol Genet 19:2313-20)、SLEの発症機序におけるEgr2の関与が注目されてきている。Egr2はCys2-His2 Zinc-finger型の転写因子であり、Egr2以外にEgr1,Egr3,Egr4が報告されている。なかでも、NFATc2の標的遺伝子はEgr2とEgr3のみであり(Rengarajan. J, 2000. Immunity 12, 293-300.)、T細胞受容体刺激時の不応答性にはEgr2、Egr3が関与するなど(Safford. M, 2005. Nat Immunol 6:472-80)、他のEgr familyとは異なる多くの共通点を有し、Egr2、Egr3は相互に機能を補完しあうと考えられている。平成24年度は、抗体産生を制御するLAG3 Tregの規定因子につき、Egr2、Egr3の協働作用という視点から解析を進める。
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