研究課題
平成23年度、勤務施設の異動に伴い、まずは実験系の移行を行った。C蛋白質誘導性筋炎(C-protein induced myositis, 以下CIM)の実験系の確立のため、HisタグのついたヒトC蛋白質断片の遺伝子をトランスフェクションした大腸菌を作製し、これを培養・蛋白質産生誘導した。大腸菌を超音波を含む手法で破砕し、コバルトあるいはニッケルカラムで吸着し、洗浄ののち溶出して精製した。これを、透析で溶媒置換し、リフォールディングして、作製した。およそ1Lの大腸菌培養液から、10mg前後のC蛋白質断片を精製することができた。SDS pageでサイズ、精製度も良好であった。このC蛋白質断片をC57BL/6マウスに免疫して、21日後に大腿四頭筋・屈筋を採取し、ホルマリン固定の後、パラフィン包埋し、病理組織切片を作製して、筋炎の評価を行った。新任地においてCIM実験を開始することができた。 遺伝子改変マウスES細胞由来樹状細胞を用いた抗原特異的免疫制御療法の開発のため、ES細胞実験に必要な実験器具・試薬を整えた。これまでに、TRAILやPD-L1などの免疫抑制性分子を遺伝子導入したES細胞を作製している。 また、ヒトC蛋白質断片を認識するT細胞受容体(TCR)を採取するため、CIMマウスから回収したCD8陽性T細胞でハイブリドーマを作製し、C蛋白質に対する抗原特異性を検証した。これまでに、安定した結果を得るに至っておらず、ex vivoでCIMマウスのCD8陽性T細胞のヒトC蛋白質断片に対する抗原特異的反応を検出することが大変難しいことをふまえると、C蛋白質断片を認識するCD8陽性T細胞集団が少ないことが予想される。目下のところ、実験系のブラッシュアップ中である。
2: おおむね順調に進展している
所属の異動のため、実験系の移行が必要であったが、設備・機器・試薬の整備など一からの準備ではあったものの、比較的順調に進めることができて、平成23年度内にCIM実験系を開始することができた。また、遺伝子改変マウスES細胞、C蛋白質を認識するCD8陽性T細胞ハイブリドーマ実験など抗原特異的免疫制御療法の準備実験を着実に遂行できた。以上のことから、本年度の予定をおおむね順調に進展できたと考えている。
次年度は、CIMを安定して十分な規模で行うことができるように実験の安定化を図る。また、CIMを誘導するC蛋白質と免疫抑制性分子を遺伝子導入したES細胞の作製と樹状細胞(ES-DC)の分化誘導を試みる。これをCIM誘導前(予防実験)あるいは誘導後(治療実験)に投与し、筋炎に与える影響を調べる。また、CIMマウスから採取したCD8陽性T細胞のハイブリドーマを再度スクリーニングしてC蛋白質を認識するTCRを明らかにし、このTCR遺伝子導入したCD8陽性CD122陽性制御性T細胞の作製を試みる。この制御性T細胞をCIMマウスに投与して、発症の予防あるいは治療効果を検証する。さらには、CIMマウスより採取したC蛋白質を認識するCD4陽性T細胞にFoxp3遺伝子を導入して制御性T(Treg)細胞化し、これをマウスに移入してCIMの発症を検証する。これによりTreg細胞のCD8陽性T細胞による自己免疫疾患における影響を検討する予定である。
次年度の本研究の経費としては、C蛋白質断片の精製、および動物実験に必要なマウスの購入と飼育、CIMの誘導に必要な試薬の費用が大部分を占める予定である。さらに、消耗品費用として、細胞培養用の一般試薬やチューブなどの消耗品、ならびに検出試薬の購入費用が必要と考えている。また、他施設の優れた技術の習得のための調査・研究費用、および情報収集や成果の発表のための成果発表費用、学術雑誌の投稿ならびに掲載のための諸費用の計上を予定している。
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