中條―西村症候群は、本邦にしか報告のない原因不明の遺伝性炎症性疾患である。その罹患患者数の少なさから本症候群の存在は広く認識されていたが、科学的原因解明の検討や特効的治療法の開発は行なわれていなかった。 我々は罹患患者とその家族の大きな協力を頂き、本症候群の原因解明に成功した。その原因とは、プロテアソームサブユニットの疾患特異的遺伝子変異であった。この発見まではプロテアソームの遺伝子変異報告は皆無であった。つまり、初めての中條ー西村症候群における原因解明であり、ヒトにおける初めてのプロテアソーム機能異常症の発見である。 中條-西村症候群患者の皮膚炎症機序に皮膚繊維芽細胞から産生される単球遊走因子が関与している可能性があると考えられていた。その転写発現量は、患者細胞では健常者細胞と比べて2倍以上だった。また、蛋白質分泌量は患者細胞では健常者と比べて約3倍だった。単球遊走因子の発現を促進する転写因子の転写発現量は、プロテアソーム阻害剤処理を行った細胞は未処理細胞と比べて発現量が増加していた。とくに、時間経過と共に両者間の差は大きくなり、プロテアソーム阻害剤処理細胞においては二相性の発現上昇を認めた。 本疾患の皮膚病変において皮膚線維芽細胞が産生する単球遊走蛋白は罹患皮膚への単球浸潤に関与している可能性が示唆された。本疾患の特徴である誘因のない炎症を来す機序の一つと考えられた。 失われて初めてわかるプロテアソームの正常機能を理解することは、本邦特有の自己炎症症候群の新たな治療法開発のみならず、誘因のない全身炎症に関わる分子を明らかにしることを通じて、炎症を呈する他の疾患制御戦略の新展開に貢献出来ると期待される。
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