研究課題/領域番号 |
23791119
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅人 杏林大学, 医学部, 助教 (00458902)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 抗G-CSF自己抗体 / 肺炎 / G-CSF / 自己抗体 / 好中球 |
研究概要 |
本研究の目的は、抗G-CSF自己抗体の作用機序を、細菌性肺炎に焦点をあてて解明することである。平成24年度の実験計画では、(1)抗G-CSF自己抗体の精製し、(2)自己抗体の測定系と、(3)G-CSF-自己抗体複合体の測定系を確立することとしていた。 平成24年度の実績は、以下の通りである。(1)G-CSF-カラムを用いて抗G-CSF自己抗体を精製し、結合特異性を(1)結合アッセイ、(2)結合阻害アッセイで確認した。(2)G-CSFカラムとELISAを組み合わせ、高感度の自己抗体の測定系を開発した。すなわち、血清をG-CSF-カラムに反応させ、カラムの溶出液(G-CSF結合物質を含む)をELISAで解析することで、非特異的な反応を格段に抑えた高感度ELISAを実現した。ELISAの標準抗体には、γグロブリン製剤から大量に精製した抗G-CSF抗体を用いた。約34名の肺炎患者(治療前、治療開始3、7、14日目)と17例の健常者を解析した。健常者には低濃度の抗G-CSF自己抗体が存在した。肺炎患者では、治療開始前は自己抗体価が低く、治療開始後7‐14日では、健常者よりもやや自己抗体価が上昇することが分かった。(3)免疫複合体(G-CSF-自己抗体複合体)の測定系を開発した。血清中のIgGをプロテインGに結合させ、SDS溶液と熱処理でIgGをプロテインGから溶出させ、同時に免疫複合体を不可逆的に解離させた。SDS溶液を透析し、溶液中のG-CSFを測定して複合体濃度とした。健常者(n=8)よりも肺炎患者(6患者、24検体)で免疫複合体価が高かった。また、血清中にフリーで存在するG-CSFは、肺炎患者の治療開始前に高値で、治療開始後3日以降に低下した。 以上の結果より、(I)抗G-CSF自己抗体はG-CSFが高値の時には消費性に低下するが、(2)内因性G-CSF刺激で自己抗体価が上昇することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は、当初の研究計画に沿って順調に達成されている。平成24年度に計画していた、(1)抗G-CSF自己抗体の精製、(2)抗G-CSF自己抗体の測定系の開発、(3)G-CSF-自己抗体免疫複合体の測定系の開発は順調に達成された。 抗G-CSF自己抗体の測定系については、当初は単純なELISAによる測定を予定していたが、G-CSF‐カラムと組み合わせることで、より高感度かつ信頼性の高い測定系を開発することができた。また、ガンマグロブリン製剤からELISA用の標準抗体を精製したことで、自己抗体を蛋白濃度で定量できるようになり、再現性も良好であった。免疫複合体の測定も順調に進捗している。今後は解析検体数を増やすことで、より信頼性の高いデータが得られると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
抗G-CSF自己抗体の生物学的機能を以下の方法で解析する。(1)G-CSF依存性細胞株(NFS-60細胞)を用いたバイオアッセイで、抗G-CSF自己抗体がG-CSF活性を中和するかを解析する。(2)G-CSF‐自己抗体複合体が、Fc受容体を介してG-CSFシグナルを好中球に伝達するか否かを解析する。 新たな自己抗体の機能解析として、(3)抗G-CSF自己抗体が好中球の肺内への遊走を阻止し得るかを解析する。G-CSFは好中球の接着因子(CD11a、CD11b)を発現させるため、自己抗体が接着因子の発現を抑制するかをFACS解析で明らかにする。 肺炎患者における自己抗体価、G-CSF-自己抗体複合体価、フリーG-CSFの経時変化の解析を継続し、解析検体数を増やすことで信頼性の高いデータを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は以下の使途に使用する。(1)NFS-60細胞の培養実験を行うために、培地、培養実験試薬を購入する。(2)Fc受容体を介したG-CSF-自己抗体複合体によるG-CSFシグナル伝達を解析するため、細胞内シグナル伝達の解析試薬、好中球遊走能を解析するボイデンチャンバーを購入する。(3)好中球の表面へのCD11a、CD11bの発現を解析するために、FACS解析用の試薬を購入する。(4)上記で得られた研究成果を発表するために、国際学会、国内学会に参加する。
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