制御性T細胞(regulatory T cell;Treg)は、膠原病すなわち自己免疫疾患の制御に不可欠である。しかし近年、マスター遺伝子Foxp3を発現して胸腺由来のTregになったものが、Foxp3の発現を失い、サイトカイン産生エフェクター細胞(exFoxp3細胞)に変化する「可塑性」という現象が報告された。また、この抑制機能を失ったTregが自己免疫疾患の原因あるいは増悪化に関与する可能性が指摘された(Hori S et al. Trends in Immunology 2011)。我々は、T細胞特異的SOCS1欠損マウスにおいて、SOCS1を欠損するTregがexFoxp3細胞に転換して自己免疫疾患様の症状を示すことを報告した(Takahashi R et al. J.Exp.Med. 2011)。 しかしながら、このマウスでは恒常的に非Tregから産生される炎症サイトカインがTregに対して影響していために、Treg特異的SOCS1欠損マウスを用いて実験を行った。T細胞特異的SOCS1欠損マウスと異なり、Treg特異的SOCS1欠損マウスでは抑制能、Foxp3の発現は共に維持された。Treg特異的SOCS1欠損マウス由来のTregは、in vitroの培養でそのままではIFNgammaを産生しないが、Tregの可塑性を惹起するT細胞特異的SOCS1欠損マウス由来の抗原提示細胞と共に培養すると、Foxp3を失いIFNgammaを産生するようになった。それにはSTAT4-IL-12が関係することを認めた。 現在、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウス、SLE患者検体でTregの可塑性を実験中であるが、SLEではSTAT4の遺伝子変異なども報告されており、この機序が関与している可能性が高い。
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