研究課題
表皮γδT細胞(DETC)の機能解析に必要な遺伝子改変マウスの作製およびその解析を目的として研究を進めた。具体的には、DETCで特異的に発現する遺伝子を同定し、それをもとにCreマウスを作製すると同時にVγ5flox/floxマウスを作製する。その後、これらマウスを掛け合わせ、DETCが存在しない環境を構築し、DETCの機能を解析する。本年度、DETCとその他の細胞(肺、腸管、腹腔γδT細胞、抹消αβT細胞、ランゲルハンス細胞、真皮樹上細胞等)の網羅的な遺伝子発現プロファイルの解析から、DETC特異的に発現する遺伝子を見いだす為、各種細胞の単離を行った。表皮、腸管、脾臓の各臓器について、適したγδT細胞の単離方法を検討した。表皮細胞では、セルソーターによりVγ5+γδTCR+細胞をソーティングした。DETCの存在割合は非常に少ないが、今年度の操作により、解析に十分な量の細胞が回収されつつある。その他の細胞についても、同様に回収終了が見込まれており、網羅的な遺伝子発現プロファイルの解析を間近に控えている状況である。一方、DETCの解析ツールの作製と平行し、DETCの機能を探るために、RAG欠損マウスへ野生型マウスの脾臓細胞を移入することで、DETCが無い状況を作製した。このマウスについてDNFB(dinitrofluorobenzene)を用いて接触性皮膚炎を誘導し、耳翼の肥厚で評価したところ、野生型マウスとDETCの無いマウスは、同程度であるという結果が得られた。接触性皮膚炎の増悪化が認められている、B6背景のTCRδ欠損マウスを用いた既存の報告とは、異なる結果が得られたことから、マウスの背景によってDETCの役割が異なる可能性が考えられた。以上の23年度の研究成果により、24年度において解析を開始する準備が整い、かつ、今までに無い新たなDETCに関する知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
DETC特異的に発現する遺伝子の同定に向け、DETCの単離をはじめ、その他細胞についても単離が終わりつつある。まもなく、これら細胞について網羅的な遺伝子発現プロファイルの解析の後、DETC特異的に発現する遺伝子が明らかになることが見込まれ、遺伝子改変マウスの作製に着手可能であることから、進展は概ね順調である。
DETC特異的に発現する遺伝子を同定し、この遺伝子のプロモーター制御下でCre recombinase遺伝子が発現するマウスを作製する。同時期に、DETCで発現しているVγ5遺伝子をloxP配列で挟んだコンストラクトのマウスを作製する。作製したマウスを掛け合わせ、接触性皮膚炎を誘導し、DETCの機能解析を行う。一方で、同定した遺伝子を発現する細胞がヒトの皮膚組織に存在するか検討する。
遺伝子発現を評価する為のRNA抽出キットや、マウスの遺伝子型を調べるため、DNA抽出キットを利用する。遺伝子改変マウスの利用に際して、維持費とコントロールマウスの購入が必要となる。作製したマウスの解析では、フローサイトメトリーや組織染色用の抗体、炎症パラメータを評価する為のELISAキットを利用する。主にこれら試薬について研究費の利用を計画している。
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circulation
巻: 124 ページ: S187-S196
10.1161/CIRCULATIONAHA.110.014852
10.2332/allergolint.10-OA-0283