研究課題/領域番号 |
23791131
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青柳 哲史 東北大学, 大学病院, 助教 (50581609)
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キーワード | インフルエンザ / 喘息 / 線維化 / 肺傷害 |
研究概要 |
2009H1N1や季節性インフルエンザウイルス感染症では、既存の肺疾患(気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患)を有する症例で急性呼吸不全を呈し重症化することが知られている。 そこで今回喘息モデルマウスにおけるインフルエンザウイルス感染による重症化メカニズムの解明のため、モデルマウスの作成を試みた。具体的にはOVA-alumで感作させたマウスにOVA challenge時にインフルエンザウイルスを同時感染させた。しかし、予想に反してOVA-alumで感作させたマウスの方が臨床経過(死亡率・体重減少)および肺病理組織学的所見においてインフルエンザウイルス単独感染と比較し軽度であった。また、インフルエンザウイルスの接種時期を工夫するも同様の傾向にあった。 そこで、インフルエンザウイルス単独感染において肺への組織傷害を検討するために、非致死量のインフルエンザウイルスを投与し継時的に病理組織学的所見を観察すると、感染11日目に体重減少がピークとなり、肺の組織傷害が著名となったが、感染14日目から肺の線維化所見が見られるようになり、感染35日目には気管支拡張所見および気道周囲コラーゲンの沈着を認めるようになった。 このように、インフルエンザウイルス単独感染でも気道周囲を中心に不可逆的な線維化を呈することが、ヒトにおいてもインフルエンザウイルス感染の気道傷害性を説明することが可能なモデルマウスを作製することが可能となった。 現在、インフルエンザウイルス感染後の肺の部分的な線維化のメカニズムおよび治療探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、当初気管支喘息のインフルエンザウイルス感染による喘息の重症化メカニズムを解明すべく、モデルマウスの作製と病態に関与する自然免疫細胞の関与について検討を行う予定であった。 しかし、喘息モデルマウスにインフルエンザウイルスを感染させても予想に反して、インフルエンザウイルス単独感染よりも気道障害が軽微であることが判明した。 一方で、非致死量のインフルエンザウイルスを感染させることで気道周囲に不可逆的な気道障害を引き起こすことが判明した。その主体が気道周囲を中心とした線維化であることが判明し、現在インフルエンザウイルス単独感染後の肺線維化の病態メカニズムおよび治療法の確立の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、インフルエンザウイルス単独感染による肺線維化モデルの作製に成功し、肺および気道における線維化の評価を中心に行っている。また、気道および肺傷害因子の一つである一酸化窒素(NO)に着目し、インフルエンザウイルス感染後に肺内で増えるマクロファージおよび単球からのNO産生と肺線維化に着目し検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降の使用額は、当初計画していたインフルエンザウイルス感染による喘息増悪モデルマウスの作成が困難であることが判明したため、インフルエンザウイルス単独感染による肺・気道線維化モデルを用いて研究を行っている。次年度以降に実施する線維化の病態解析に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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