研究概要 |
本研究においては、TDMが保険適応されているアミノグリコシド系抗菌薬(AGs)およびグリコペプチド系抗菌薬(GPs)のクリアランスを用いてTDMが保険未承認であるが、AGs、GPsと併用されることが多いセフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系等の腎排泄型抗菌薬の投与量を論理的に設計する方法論を構築することを目的として検討を行った。 まず、LC-MS/MSを用いた各種抗菌薬の同時定量系の構築に着手し、代表的薬剤については定量系を確立することができた。次いで、定量系の開発と並行して収集した約1,000検体のTDM対象抗菌薬と非対象抗菌薬を併用した患者の血清検体の測定を行ったところ、メロペネム等の抗菌薬においてクリアランスがTDM対象抗菌薬のクリアランスと相関することが見いだされた。また、本研究の過程で集積された臨床データを解析することで、持続血液濾過透析(CHDF)導入患者では複数種の抗菌薬の投与量をCHDF実施条件から精度よく予測可能であることを示した。これらの結果は、腎排泄型抗菌薬のクリアランスが相互に相関していることを示唆している。しかし一方で、複数の抗菌薬を併用している患者では投与期間内に腎機能が経時的に低下していく症例が多く、そのようなケースでは抗菌薬のクリアランスを正確に推定することが困難であった。そのため、腎機能変動に対応した新たな薬物動態モデルを構築することで、腎機能変動時においても正確なクリアランス推定を可能とした。これらの知見は本研究期間内に発表された2編の論文に纏められている。今後は、これらの知見を基にさらに血中濃度データを追加した解析を行うことで、TDMデータを応用したTDM非対象薬剤の投与量設計法を構築する予定である。
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