研究課題/領域番号 |
23791138
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
今村 圭文 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90467960)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アスペルギルス |
研究概要 |
肺に感染症を引き起こす真菌の中でアスペルギルスは最も重要な病原体の一つであり、急性感染症としての侵襲性肺アスペルギルス症と慢性感染症としての肺アスペルギローマや慢性壊死性肺アスペルギルス症などが知られている。慢性感染に対して現在用いられている抗真菌薬による治療では有効率は3割から6割程度と低く、慢性肺アスペルギルス感染症に有効な治療法の確立が急務となっている。 このように抗真菌薬治療の効果が低い原因として、真菌のバイオフィルム形成能の影響が報告されているが、アスペルギルス・バイオフィルムに対して宿主免疫がどのように応答するのか、逆にバイオフィルムは宿主免疫に対してどのように反応するのか、どのような因子がバイオフィルムを抑制するのかといった点ついては全く不明のままである。本研究はこれらのアスペルギルス・バイオフィルムと宿主免疫との相互反応を解析することを目的としている。 平成23年度の研究成果としては、ヒト気道上皮細胞上で、アスペルギルスがバイオフィルムを形成しうることが確認できた。アスペルギルス・バイオフィルムの形成において、宿主免疫のひとつの因子である血清を加えると、バイオフィルムのバイオマスが増加することが確認できた。一方で浮遊菌に関しては、血清の付加はプラスチック壁への接着能を阻害していた。さらに、細胞壁成分で重要なα-1,3グルカンの発現が低下している所見も認められた。 以上のことより、血清の存在下で、アスペルギルスの気道上皮細胞への接着は阻害され、その機序として接着時に糊の役割を果たすと考えられるα-1,3グルカンの発現低下が推測された。しかし、一旦バイオフィルムを形成すると、血清はバイオフィルムの増加に寄与することも明らかとなった。また、気道上皮細胞上のアスペルギルス・バイオフィルムモデルが利用できることが確認でき、今後の研究進展に応用できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、アスペルギルスバイオフィルムと宿主免疫との相互反応について、解析がすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床分離株毎に宿主免疫の反応が異なるか、バイオフィルム形成能が異なるか等について解析する。またα-1,3グルカナーゼ等の酵素を用いてバイオフィルムの形成阻害や宿主免疫反応の変化が生じないかも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、アスペルギルスのタンパク・多糖類発現の評価に必要な共焦点レーザー顕微鏡、RT-PCR法の試薬代等、宿主免疫反応の解析に必要なELISAキット代等、研究成果を国内外の学会で発表するための旅費にあてる。
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