研究課題/領域番号 |
23791140
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
天野 将之 熊本大学, エイズ学研究センター, gCOEリサーチ・アソシエイト (30575080)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Gag蛋白 / アミノ酸挿入変異 / Gag蛋白自壊 / HIV-1 |
研究概要 |
我々は以前、長期間のHAART療法後に治療不応性となった患者由来の多剤耐性臨床分離HIV-1株を用いて、Gag領域の開裂部位周辺に挿入変異が入る事により、薬剤耐性関連変異によって減衰したHIV PRのGag前駆蛋白に対する酵素活性が改善する事を報告したが(Tamiya & Mitsuya et al, J Virol. 2004)、このような挿入変異による代償は完全ではなく、薬剤耐性株の複製能は野生株と比し依然劣ったままである事が多い。このため我々はGag挿入変異がGag前駆蛋白のprocessingや変異株の感染性および複製能に対し影響を及ぼし得ると仮定、Gag領域の様々な位置にアミノ酸配列を挿入した変異株を多数作成し、各変異株を細胞にtransfection (TF)後、得られたcell/ virion lysatesを用いてHIV-1 Gag p24抗体によるwestern blottingを行ったところ、異常なGag蛋白の変性によると考えられるdegradation産物が出現する事を確認した。この結果より挿入変異を有するGag蛋白を分解の方向に進ませる何らかの機序の存在が示唆された為、挿入変異によるHIV-1の構造学的・ウイルス学的特性の変容について詳細な検討を行っている。当該年度において、挿入変異を有するPr55Gag前駆蛋白と蛍光蛋白GFPの融合蛋白発現プラスミドを作成し、細胞にTF後蛍光顕微鏡にて、挿入変異によるPr55Gag前駆蛋白の細胞内輸送及び局在への影響を検討したところ、挿入変異はGag前駆蛋白の細胞内輸送に明らかな影響を及ぼさない事が判った。更に細胞側因子およびGag以外のウイルス側因子の影響を完全に除外する為、挿入変異Gag (Capsid) 蛋白のみを細胞に単独発現させた結果、完全長ウイルスでの結果と同様にCapsid蛋白の著しい自壊を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように細胞側因子およびGag以外のウイルス側因子の影響を完全に除外した挿入変異Gag (Capsid) 蛋白のみを細胞に単独発現させた場合も、完全長ウイルスでの結果と同様にCapsid蛋白の著しい自壊及びその顕著な進行を認める事、またGag自壊が挿入変異によるGag前駆蛋白の細胞内輸送障害およびそれに起因する細胞内分解によるものではない事等を明らかにしており、本研究計画における達成度は高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
挿入変異を有するGag蛋白を結晶化し、結晶構造解析の手法を用いて挿入変異がGag蛋白の立体構造に与える影響について詳細な検討を行う。更に透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)により、挿入変異がGag蛋白の多量体形成およびウイルス構造蛋白の成熟化に如何に影響を及ぼしているかを検討する。また本研究により得られた知見を基盤として、既に入手済みである700万個以上の購入可能な低分子化合物データを基にvirtual docking simulationの手法を用いて解析する事でHIV-1 CAを標的とした新規治療法の開発につながる低分子化合物の検索を現在精力的に行っており、今後も極めて先駆的・先導的な課題であるGag自壊現象に関する解析を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に計画している研究を今後も推進するために、次年度使用研究費を使用していく。
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