研究課題/領域番号 |
23791148
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新堀 哲也 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40436134)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | RAS/MAPK症候群 / 先天奇形症候群 / Noonan症候群 / CFC症候群 / Costello症候群 |
研究概要 |
コステロ症候群で同定される変異の約95%は12、13番目のグリシンに集中する。また、それ以外の変異も同定されているが、変異ごとの機能的な相違と臨床像との関連は未だ明らかでない。本研究では臨床的にコステロ症候群が疑われた31例で遺伝子解析を行い、21例に4種類のHRAS遺伝子変異を同定した。HRAS変異体の機能的差異を解析するため、HRAS変異体9種類を培養細胞に導入し、RAS-RAF binding assayを行ったところ、Ala146Val変異ではRAFと結合したRASの増加はGly12Ser等と比べ軽度であった。またRASシグナル下流の転写活性を2種類調べたところ、Lys117Arg、Ala146Val変異ではGly12Ser等と比べ転写活性の上昇は軽度であった。これらの結果から、Lys117ArgおよびAla146Valを持つコステロ症候群患者の臨床症状が典型例に比べやや軽度であるのは、変異体のシグナル伝達経路下流への影響が弱いためである可能性が示唆された。また、ヒト線維芽細胞に活性型HRASであるG12V変異体を導入すると細胞老化を引き起こすことがすでに明らかとなっていたが、コステロ症候群で同定された他の変異でも細胞老化が起こるかを検証したところ、9種類の変異すべてで細胞老化が引き起こされた。細胞老化が、コステロ症候群の一部の臨床症状の病因に関与している可能性が示唆された。これらの研究成果についてJournal of Human Genetics誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災による長期の停電および研究施設の立ち入り禁止により、以前から蓄積されていた患者由来腫瘍組織などの凍結サンプルやプラスミドベクターのグリセオールストックが失われたが、DNAサンプルは無事であった。それら及び新たに収集された症例からの検体を用いてNoonan症候群、Costello症候群、CFC症候群の患者由来DNAについて遺伝子解析を継続的に行うことができた。Costello症候群の病態に関する研究を英文誌に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きRAS/MAPK症候群の症例収集および遺伝子解析研究を行う。また、シーケンシングで変異の同定されなかった症例については、アレイCGHにてゲノムの全領域のコピー数について検討する。腫瘍検体の入手が出来た場合には、LOHの有無の検討も行う。患者検体および培養細胞からDNAを抽出し、DNAメチル化アレイでCpGアイランドの網羅的な解析を行う。メチル化状態と遺伝子発現の相関を検討し、メチル化により発現量が変化していると考えられる部位ではbisulfite処理したDNAのシーケンシング等で確認を行う。特に臨床症状に結びつくなど重要と考えられる遺伝子発現変化が同定された場合はタンパクレベルでの発現を確認するため、ウエスタンブロットを行う。メチル化解析には次世代シーケンサーを使用した手法も考慮に入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
アレイCGH解析用ソフトウェアライセンスを購入する。遺伝子解析に必要なPCRプライマー、ポリメラーゼ、シークエンス反応試薬などの消耗品や、細胞培養に必要な使い捨てプラスチック容器、培地(血清、抗生剤含む)、トランスフェクション試薬を購入予定である。エピジェネティクス解析に必要なキットの購入も予定している。また、患者細胞や患者で同定された遺伝子変異を導入した培養細胞での網羅的遺伝子発現解析の外部受託も予定している。
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