研究課題/領域番号 |
23791150
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小野田 正志 山形大学, 医学部, 助教 (10582562)
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キーワード | 抗腫瘍免疫 / 樹状細胞療法 / STAT3 / エピジェネティックス / HDAC |
研究概要 |
樹状細胞に代表される抗原提示細胞は、サイトカイン(IL-12, IL-10等)を産生して、抗腫瘍免疫を誘導する。STAT3欠損樹状細胞は、野生型に比べて高い抗腫瘍免疫を誘導する。STAT3がどのようにサイトカイン産生調節を行っているか、ヒストンアセチル化(HDAC7、HDAC11)に着目し、エピジェネティックス制御の点から分子レベルで解明する。 STAT3によるHDACsの発現調節を、STAT3欠損骨髄由来樹状細胞、STAT3 shRNA knockdown マクロファージ細胞株を用いて、RT-PCR法、ウェスタンブロット法で確認する。STAT3がHDACsの発現をどのように調節しているかをプロモーター解析で証明する。次に、STAT3欠損抗原提示細胞中のサイトカインの発現を野生型とともにELISA法で定量比較する。HDACSをSTAT3欠損細胞株にKnock inして、サイトカインが機能的に救済されるかをELISA法で検討する。サイトカインプロモーター領域、特にIL-12、IL-10のConserved noncoding sequenceのヒストンアセチル化をChIP法で検討する。 STAT3欠損骨髄由来樹状細胞を誘導し、野生型と共に実験に供した。樹状細胞への分化はフローサイトメトリー法で確認した。また、STAT3 shRNA knockdown マクロファージ細胞株を樹立し、野生型(RAW264.7細胞株)と共に実験に供した。細胞株中のSTAT3発現はウェスタンブロット法で確認した。現在、これらの細胞株を用い、ヒストンアセチル化、特にHDAC7、HDAC11をどのように調節し、サイトカインの産生を調節しているかを解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗原提示細胞として2つの細胞を用意した。1つは樹状細胞で、Inabaらの方法に準じて、STAT3コンディショナルノックアウトマウスからGM-CSFを用いて骨髄由来樹状細胞を誘導した。細胞の誘導は問題なく誘導でき、野生型骨髄由来樹状細胞とともに実験に供した。樹状細胞への分化はフローサイトメトリー法で確認した。もう一つは、マクロファージで、マクロファージ細胞株RAW264.7細胞を用意し、STAT3 shRNA knockdown マクロファージ細胞株を樹立し、野生型細胞株と共に実験に供した。細胞株中のSTAT3発現低下の確認は、RT-PCR法、ウェスタンブロット法で行った。このマクロファージ細胞株の細胞増殖能が不安定で、マクロファージ細胞株RAW264.7細胞のSTAT3欠損細胞株の樹立は予想を超え時間を要した。STAT3が細胞株の増殖に関与することが理由の一つと考えられた。これらの細胞株の樹立、維持に時間を要したために、遅れを生じているが、現在これらの細胞株を用い、ヒストンアセチル化特にHDAC7, HDAC11に着目し、その発現をRT-PCR法、ウェスタンブロット法で確認し、サイトカインの発現解析を行っている。尚、STAT3欠損抗原提示細胞中のHDAC7, HDAC11の発現パターンが、当初推定していた発現パターンと異なる可能性が出てきたため、当初の実験計画を変更し、実験手法を変えて再検討する必要があった。この結果は、本研究の根幹に関わるもので、非常に重要な意味を持つと考えられ、その検討に一定の期間を要した。今後、STAT3がHDAC7、HDAC11をどのように調節し、サイトカインの産生を調節するかを解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
STAT3がHDAC7、HDAC11の発現をどのように調節しているかをプロモーター解析を用いて証明する。HDACのプロモーター領域へのSTAT3の結合の有無、結合部位をChIP法、EMSA法、レポーターアッセイ法を用いて解析する。次に、STAT3欠損抗原提示細胞中のサイトカインの発現(IL-12, IL-10, IL-1beta, IL-6, TNF alfa, IFN gamma)を野生型とともに定量比較する。定量にはELISA法、Cytoplex法を用いて証明する。これらSTAT3がHDAC7、HDAC11を介してサイトカインの発現を調節していることを証明するために、HDAC7、HDAC11をSTAT3欠損細胞株にknock inしてサイトカイン発現が機能的にレスキューされるかをELISA法、Cytoplex法を用いて検討する。サイトカインプロモーター領域のヒストンアセチル化をChIP法で確認する。IL-12、IL-10に着目し、既報のConserved noncoding sequenceのヒストンアセチル化をChIP法で検討する。STAT3とタンパク間相互作用を有するHDAC7がSTAT3の影響を受けて細胞内局在を変えている可能性を検討するために、細胞内染色法を用いて、STAT3との共発現と細胞内分布を蛍光顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡で評価する。抗原提示細胞としてSTAT3コンディショナルノックアウトマウスから骨髄由来樹状細胞を誘導して、野生型骨髄由来樹状細胞とともに比較検討する他、マクロファージ細胞株RAW264.7細胞とともに樹立したSTAT3 shRNA knockdownマクロファージ細胞株と用いて比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験系の維持、遂行のため、消耗品、備品、酵素、抗体類の新規購入、マウスの飼育費(骨髄由来樹状細胞の誘導、マクロファージ細胞株維持に必要なサイトカインの購入、RT-PCR、リアルタイムPCR用のプライマー、ウェスタンブロット用の抗体、フローサイトメトリー用の抗体、ChIPアッセイ用の抗体、それぞれの実験系の試薬類の購入等)。国内外での研究成果の発表のための学会参加費、旅費。研究協力者への経費に使用する。
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