研究課題
近年、成人の急性骨髄成白血病(AML)において新規の予後不良因子としてDNMT3A遺伝子変異が報告された。我々は、小児AML149例、若年性骨髄単球性白血病(JMML)40例、骨髄異形成症候群(MDS)28例で解析を行ったが、DNMT3A遺伝子変異は同定されなかった(Br J Haematol.156:413-4.2012)。また、これまで家族性AML/MDSでは、RUNX1,CEBPA遺伝子変異が報告されているが、発症しない症例もみられ、発症のメカニズムは解明されていなかった。今回、RUNX1変異を有するAML/MDS家系で慢性骨髄単球性白血病(CMML)を発症した1女児例からCMML発症後の検体のみからCBL遺伝子変異を同定した。RUNX1変異とCBL変異が発症に協調的に関与するものと考えられた(Blood. 2012 119:2612-4.2012)。さらに、乳児急性リンパ性白血病(ALL)3例においてCBL遺伝子のミスセンス変異を同定した(Br J Haematol. 156:672-4.2012)。リンパ性白血病でのCBL遺伝子変異の初の報告であり、乳児ALLの病因解明に寄与すると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
近年のバイオインフォマティクス技術の進展に伴い、次世代シークエンサーを用いた高速シークエンスの技術が急速に普及している。従来のサンガーシークエンサーではその解析能力は500bp程度と次世代シークエンサーに比し解析能力は大きく劣るため、我々は当初、平成25年度に計画していた次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子変異解析を平成23年度中から前倒して施行し、解析を始めている。
次世代シークエンサーで得られた遺伝子変異に対し、当初の計画通り、SNPアレイ等で解析した小児急性白血病とMDSにおけるゲノムコピー数の変化のうちホモ欠失、LOH、UPD、 gainおよびamplificationの共通領域内に存在する有用な遺伝子(群)につき、real-time PCRを用いて発現解析を行い、またHeterodyplex mobility assay法、直接塩基配列決定法による変異解析およびコロニーアッセイなどにより、腫瘍化との関連性のさらなる検証を行い、標的遺伝子の同定を試みる予定である。並行して網羅的メチル化解析の結果より抽出した候補標的遺伝子に関しても同様の遺伝子の性状解析を行いたいと考えている。
次世代シークエンサーで得られた遺伝子変異に対して、有用な遺伝子(群)につき、real-time PCRを用いた発現解析、また直接塩基決定法による遺伝子変異の同定を行う試薬代等に充てたいと考えている。
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Blood
巻: 119 ページ: 2612-4.
22138511
Br J Haematol.
巻: 156 ページ: 672-4.
21988239
巻: 156 ページ: 413-4.
21981547