研究課題
平成23年度、申請者らは臨床的に診断がつかず染色体核型正常である多発奇形を伴う発達遅滞症例 (MCA/MR)646例のBACアレイによる解析を終了した。このスクリーニングによって見いだされた、小脳脳幹部低形成を伴う発達遅滞症例 (MICPCH)における疾患原因遺伝子CASKのハプロ不全を来すゲノム異常の詳細な解析、共通の10p11.23-p12.1欠失を有する症例の臨床的検討、MECP2とATRXの重複を同時に有する症例の解析については、それぞれ論文化した。 本スクリーニングから見いだされた、重度精神遅滞・長く細い顔・歯肉肥大・歯叢生・細長い指趾といった比較的明瞭な臨床的特徴を共通に有する5例を新規症候群候補として疾患原因探索を行ってゆくことが本研究の主目的であるが、そのうち2例はアレイCGHにより3p25.3領域にヘテロ欠失が見いだされており、疾患関連領域である可能性が疑われた。アレイCGHにより異常を検出されなかった3症例については、次世代シークエンサーによるエキソーム解析を計画した。このために、平成23年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「ゲノム支援」への応募を行い、昨夏に採択が決定された。解析に先立ち、エキソーム解析を行うための各医療機関における倫理審査と患者・親族の同意書の再取得が必要であり、現在これらの解析準備を進めている。解析の準備が整い次第エキソーム解析を依頼し、得られた結果を基に疾患原因遺伝子候補を絞り込み、計画した遺伝子機能析を施行してゆく予定である。 また、臨床的に類似する表現型を呈する症例、あるいは3p25.3領域にゲノム異常を有する症例を新規症例として探索するため、原因不明であるMCA/MR約400例をSNPアレイにより解析し、ゲノム異常と臨床症状との関連検討を進めている。
3: やや遅れている
ゲノムアレイを用いた解析については順調に進行しているが、次世代シークエンサーを用いた解析については、申請者の施設と症例提供の医療機関のすべてにおいて倫理的な研究計画承認と患者からの同意が必要であり、この準備のために解析開始が予定よりも遅れている現状である。研究計画承認が済んでいない一部検体提出元の医療機関における倫理審査が終了次第、解析を継続する予定である。
これまでの計画を継続し、エキソーム解析を進行してゆく。この結果を受けて、疾患原因候補遺伝子の絞り込み並びに遺伝子機能解析を行う。また、類似症例の収集解析は今年度も継続し、genotype-phenotypeの関連を明らかにするとともに新規症候群の定義を目指す。
今年度と同様、主に実験用の消耗品を中心とした物品費に多くを利用する。また、研究成果発表の場として、一回程度学会出張のための旅費として計上する予定である。
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