研究課題
精神発達遅滞は知能指数 (IQ)70未満で定義され、全人口の2-3%に存在すると報告されているが、その約60%は原因不明であり、診断、病態理解、加療・療育方針決定などに大きな支障を来している。申請者らは臨床的に診断がつかず染色体核型正常である多発奇形を伴う700例以上の発達遅滞症例を収集し、BACアレイ・SNPアレイなどを用いた多段階スクリーニングにより解析し、その約20%に疾患原因となるゲノム構造変化を見いだすとともに、CASK, BMP4と言った疾患原因遺伝子、10p11.23欠失による新規症候群候補の報告などを行ってきた。特に本研究では、重度精神遅滞、長く細い顔、歯肉肥大、歯叢生、細長い四肢・指趾といったきわめて類似したphenotypeを共有する5症例を対象に、一部症例に見いだされた3p領域の欠失を指標として、本疾患群の原因をゲノムレベルで探索し、新規症候群を確立することを目的とした。この目的のため、従来の症例に対するSNPアレイ解析を行い、疾患原因となるゲノムコピー数変化や片親性ダイソミーを探索した。また、疾患原因となる遺伝子変異を探索するため、平成23年度第2回文部科学省科学研究費新学術領域研究(研究領域提案型)『生命科学系3分野支援活動』「ゲノム支援」支援課題に申請して採択され、現在、アレイ解析によるゲノム異常を見いださなかった対象症例2例の全ゲノムシークエンスを施行している。この結果を受けて、遺伝子変異を手がかりとして両症例に共通する疾患原因遺伝子候補を探索し、モデル細胞やモデル動物を用いた遺伝子機能探索を行い、病態を解明し、新規症候群として確立することを期している。なお、潜在的な未診断症例が一定数存在している可能性を考え、原因不明の精神遅滞症例の収集・解析は継続しており、平成24年には76例のゲノムアレイ解析を行っている。
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