最近、単球系への分化能を併せ持つリンパ球前駆細胞の存在が確認され、小児B前駆細胞型急性リンパ性白血病(ALL)で時に認められる骨髄球系抗原の発現が注目されている。このうちCD33の発現は、治療成績が改善した今日においても予後不良因子とされている。我々は、小児ALLの中でも極めて予後不良な17;19転座型ALLでCD33が高頻度に陽性であり、17;19転座に由来するE2A-HLF融合遺伝子がCD33の発現を誘導していることを報告した(Akahane et al. Leukemia 2010)。本研究は、ALLにおけるCD33の発現機序を解明し、CD33発現の白血病細胞の増殖や生存、薬剤耐性への影響を明らかにすることを目的としており、今回はE2A-HLFによるCD33発現誘導の機序に焦点を絞り解析を行った。17;19転座型ALL細胞株でCD33遺伝子プロモーターのレポーター解析を進めたところ、E2A-HLFによるCD33の発現誘導にはプロモーター上のPEA3 siteが必須であった。PEA3 siteに結合する転写因子としてはETV1、ETV4、ETV5が知られているが、17;19転座型ALL細胞株でこれらの発現を解析したところ、CD33の発現とは明らかな相関を認めなかった。また、E2A-HLFを遺伝子導入したB前駆細胞型ALL細胞株で前述のPEA3結合転写因子の発現を解析したところ、E2A-HLFによりCD33の発現が誘導されても、PEA3結合転写因子の遺伝子発現には変化を認めなかった。PEA3 siteは代表的な小児難治性ALLであるPhiladelphia染色体陽性ALLや11q23転座型ALLのCD33発現においても必須であることから、ALLにおけるPEA3 siteを介したCD33の発現誘導の機序の解明は、難治性ALLに対する新たな治療戦略の糸口になると期待される。
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