平成23年度に行ったB前駆細胞型ALL細胞株におけるhHEXの遺伝子発現の解析では、LMO2とhHEXに強い相関関係を認めた。そこでhHEXの蛋白発現をWestern blotting法で半定量化して比較した。17;19転座型ALL株では高い発現を認めたのに対して、MLL陽性株では、約半数の株で比較的低レベルにとどまり、MLL陽性株ではhHEX遺伝子の発現は高くてもhHEX蛋白の発現が低い株が多く、MLL陽性株を除くとhHEX遺伝子とhHEX蛋白の発現が相関する傾向が認められた。 MLL陽性株ではLMO2の蛋白発現が低いにもかかわらずhHEX遺伝子の発現は高い傾向があり、MLL陽性株を除くと強い相関関係が認められた。特に、17;19転座型ALL株では、LMO2蛋白とhHEX遺伝子が共に高いレベルを示した。以上からMLL陽性ALLを除くB前駆細胞型ALLでは、LMO2の過剰発現がhHEXの発現に関与している可能性が示唆される一方で、MLL陽性ALLにおけるhHEX遺伝子の発現にはLMO2以外の因子が深く関与している可能性が示唆された。 そこで、LMO2の過剰発現のhHEXの発現への関与について検証するため、LMO2とhHEXが遺伝子および蛋白レベルともに高発現されているPh1陽性ALL細胞株KOPN72bi株を用いてLMO2のshRNAを導入し、LMO2とhHEXの遺伝子および蛋白の発現を解析した。LMO2のshRNA導入により遺伝子発現はコントロールの30-20%に抑制された。これに伴いLMO2の蛋白発現はコントロールと比較して10%以下に、hHEX遺伝子の発現も40-20%に抑制されていた。以上の結果から、MLL陽性ALLを除くB前駆細胞型ALLにおけるLMO2の過剰発現は、hHEX遺伝子の発現を誘導し、白血病細胞の生存と未熟性の維持に関与している可能性が示唆される。
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