研究課題
本研究では、自然免疫を担う中心的受容体であるToll様受容体(TLR)シグナル伝達及びサイトカインIL-1/18/33のシグナル伝達経路を対象としたタンパク構造及び機能解析を通じて、自己炎症性症候群や慢性炎症性疾患等の免疫異常疾患に対する効果的な治療法開発への道を開くことを目指している。具体的にはアダプター分子MyD88を標的とし、MyD88と相互作用する受容体群及びアダプター分子群のToll-Interleukin-1受容体(TIR)ドメインとの直接相互作用を詳細に解析し、IL-1ファミリー/TLRシグナルの流れを遮断・調節するような薬剤候補物質を開発することになる。平成23年度には、細胞内タンパクであるMyD88の優性阻害変異型(DN)を細胞内に外部から浸透させるためのドメイン(Protein transduction domain, PTD)を融合したPTD-MyD88-DNを大腸菌タンパク発現系で発現精製させることに成功しているが、エンドトキシンの夾雑によりこのタンパクの機能評価が困難であった。そこで、機能評価の検討方法としてTLR1及びTLR2、NF-κB reporter gene遺伝子が安定発現した細胞株を新たに導入した。また、MyD88-TIRタンパクが非還元環境ではドメイン構造の表面露出したシステインを介してS=S結合により多量体を形成してしまうことが判明したため、システインをセリンに置換したC203S-C280S(CS)変異体を構築した。MyD88-DN-CSは非還元環境でも単量体で存在することが確認できた。一方で、MyD88-DN-CSは遺伝子レベルでは、Pam3CSK4によるTLR1/2シグナル経路の活性化を有意に抑制するが、PTD-MyD88-DN-CSタンパクを添加したところ、リガンド非依存性にNF-κB活性の上昇が認められた。
2: おおむね順調に進展している
Protein transduction domain融合MyD88優性阻害型タンパクを安定に発現精製可能な実験系が確立され、さらにCS変異体により安定な単量体タンパクが大量に精製できている。多量体化の抑制によりエンドトキシンの夾雑も大幅に削減できた。しかし一方で、予想外のことに作成したPTD-MyD88-DN-CSタンパクが遺伝子レベルの発現系と異なる挙動を示している。次年度以降はこの問題点について追求していく。
次年度以降、遺伝子レベルの発現系とタンパクレベルの細胞導入の表現型の違いが何に起因するものか追求する予定である。具体的には細胞に導入されるタンパクの局在が異なるのではないかと考えている。遺伝子レベルの発現系及びリコンビナントタンパクにGFP等の蛍光タンパクを融合させ、局在を確認する予定である。また、MyD88を標的とした阻害剤の開発には遺伝子レベルの発現と同様の部位へのタンパク導入が必要であり、使用するPTDの変更も視野に入れる。
該当なし
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
J Clin Immunol
巻: 33 ページ: 325-334
10.1007
巻: 32 ページ: 1213-1220
PLoS One
巻: 7 ページ: e38423
10.1371
Mol Immunol.
巻: 52 ページ: 108-116
10.1016