研究課題/領域番号 |
23791164
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, その他 (40402284)
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キーワード | 母乳 / 小児栄養 / 生理活性脂質 / 脂肪細胞 / 脂肪酸 |
研究概要 |
母乳は、児に対して、様々な作用を及ぼすことが知られている。母乳育児による小児肥満への抑制効果のメカニズムに関して、脂肪細胞培養系を用いた実験系にて検証している。 培養細胞として、脂肪細胞のモデルとして確立されている3T3-L1 前駆脂肪細胞を用いた。母乳は、健康な授乳期にある女性より、インフォームドコンセントののち、用手法により採取し、すみやかに-70℃にて保存し、実験に供した。 母乳の全乳および乳清と、対照としての人工乳を用いて行った3T3-L1前駆脂肪細胞への添加実験により、母乳の全乳に強い脂肪細胞分化作用が存在する事が示された。次いで、Bligh&Dyer法にて母乳/人工乳より抽出した脂質成分を用いて同様の添加実験を行い、母乳中の脂質成分が、脂肪細胞分化作用を有することを確認した母乳脂質による脂肪細胞分化作用は、前駆脂肪細胞と成熟脂肪細胞の両方に作用した。また標準的な脂肪細胞分化剤であるインスリン/デキサメサゾン/イソブチルメチルキサンチン(IBMX)の非存在下でも母乳中の脂質画分は前駆脂肪細胞を分化誘導することを確認した。更に、母乳脂質のみで分化誘導刺激を行った脂肪細胞は、その後標準的な方法にて培養を継続していくと成熟脂肪細胞のマーカーである各種アディポカインの遺伝子発現が十分に認められる事より、母乳脂質による分化誘導刺激は、成熟脂肪細胞への分化刺激として十分であることが示唆される結果を得た。 平成24年度の今研究により、母乳に含まれる脂質が、脂肪細胞の分化誘導に関与することが明確に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母乳に含まれる脂質成分による脂肪細胞分化作用を明確に示す事ができたことは2年目の進行具合として、おおむね順調であると評価できる。 本研究により、論文発表が1編できたことも、進展状況としては順調であると評価できる。 本年度までに、母乳中の生理活性物質の同定にまでは至っていないため、今後更なる解析を行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)の推進方策について 1母乳中の生理活性脂質の探索について、網羅的手法を用いる。母乳脂質による脂肪細胞分化作用はあきらかとなったため、更に母乳脂質を成熟脂肪細胞に作用させた場合のアディポカインならびに各種脂肪細胞機能に重要な遺伝子群の発現に関して、DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。 2母乳と人工乳の差異に関して、幾つかの脂肪酸に焦点をしぼり、解析する。具体的には、標準品としての脂肪酸を、母乳または人工乳の組成と合わせ、脂肪細胞に添加し、検討する。 3母乳中のペプチドが脂肪細胞に与える効果に関して、網羅的手法を用いて解析する。超遠心により分離した乳清成分に関して、脂肪細胞に添加し、DNAマイクロアレイを用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(試薬、細胞培養培地など)10万円、遺伝子解析用試薬(リアルタイムPCR試薬、各種インヒビター、siRNA)30万円、脂質分析用試薬および標準品15万円、DNA マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析(受託解析) 80万円 旅費 10万円 以上の概算で使用予定である。
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