研究課題/領域番号 |
23791167
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
大河原 剛 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20469034)
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キーワード | 自閉症 / 小脳 / サリドマイド |
研究概要 |
これまでに私が所属する研究室では、妊娠ラットにサリドマイドを投与することにより発症させた自閉症モデルラットにおいて、自閉症の特徴であるセロトニン系の異常、セロトニン神経の起始核である縫線核の異常や行動異常が起こることを明らかにしている。本研究では、この自閉症モデルラットを用い、未解決の課題に関して、生化学的、形態学的、行動学的な解析を行い、ヒト自閉症の発症メカニズム解明の基礎とする。 平成23年度の研究では、形態学的な解析を行い、自閉症モデルラットの小脳において異常が見られたことを報告した。自閉症患者の中には、運動失調をきたす例が報告されていることから、本研究において運動中枢である小脳の異常が見られたことは、自閉症患者の運動失調の原因を考えるうえで大変興味深い。 平成24年度の研究では、自閉症モデルラット(n=10)と対照群ラット(n=12)の線条体を取り出し、HPLCにより線条体の重さ(g)あたりのドーパミン含量(ng)を測定し、自閉症モデルラットと対照群ラットの間に違いが見られないのか調べた。その結果、自閉症モデルラットと対照群ラットの間のドーパミン含量の違いは見られなかった(サリドマイド投与群:3639.0±1232.3 ドーパミン含量(ng)/線条体の重量(g), 対照群:4072.4±522.7 ドーパミン含量(ng)/線条体の重量(g))。今回の研究では、ドーパミン量の測定を行ったが差が見られなかったことから、今後は他のモノアミンに関しても、測定を行う予定である。 今後、本研究を進めることで、我々の自閉症モデルラットで得られた成果が、人の自閉症研究に還元され、新たな診断方法の開発や新たな治療方法の開発に役立つことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私の所属する研究室では、これまでにサリドマイドを用いた自閉症モデルラットにおいて、セロトニン系の異常や行動異常が起こっていることを明らかにしている。本研究では、所属する研究室で新たに開発された自閉症モデルラットを用い、未だ未解決の課題であるセロトニン以外のモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン)、脳の形態、社会行動に異常が見られないか明らかにすることを目的とする。 平成23年度の研究では、自閉症モデルラットにおいて、形態学的な解析を行い、運動中枢である小脳に異常があることを明らかにした。平成24年度の研究では、生化学的な解析として、HPLCを用いて線条体におけるドーパミン含量の測定を行った。平成25年度は、生化学的解析の続きと行動学的解析を行う予定である。 このように本研究は、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23、24年度の研究では、自閉症モデルラットにおいて、運動中枢である小脳に形態学的な異常があることを明らかにした。また線条体におけるドーパミン含量の測定も行ったが、自閉症モデルラットと対照群の間に違いが見られなかった。本研究の目的は、我々が開発した自閉症モデルラットを用い、未解決の課題を形態学的、生化学的、行動学的に明らかにすることである。これまでに形態学的解析は完了し、生化学的解析も進行中であるが、行動解析に関しては未解決のままである。今後は、未解決な課題である社会行動を中心に、進行中の課題である生化学的解析も行う予定である。具体的には、以下の2点を明らかにする。 ① Fileらの方法に基づき、2匹の雄ラット(薬剤投与群と対照群を1匹ずつ、または対照群を2匹)をテスト用のケージにいれ、2匹の間の社会的関係を形成するための行動を観察することで、薬剤投与群と対照群の間に社会相互作用に違いが見られないのか明らかにする。 ② 自閉症モデルラットと対照群ラットの脳(線条体、側坐核、海馬、大脳皮質)を取り出し、HPLCによりノルアドレナリン含量を測定し、自閉症モデルラットと対照群ラットの間に違いが見られないのか調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
妊娠ラットの購入代金として25万円を、その飼料代として5万円を計上する。また生化学実験として、HPLCを用いた解析を行う必要があり、その試薬代として10万円を計上する。行動学的実験には、マイクロダイアリシスに必要な消耗品があり、その経費として50万円を計上する。
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