研究概要 |
本研究では、ヒト胚性幹(ES)細胞および誘導多能性幹(iPS)細胞を用いた骨格筋前駆細胞の分離同定とその移植における効果の検証を目的とした。具体的には(1)ヒトES/iPS細胞のin vitroでの骨格筋細胞への分化誘導系からの骨格筋幹/前駆細胞の表面抗原による分離同定、(2)抽出した骨格筋幹/前駆細胞の免疫不全マウスへの移植によるin vivoでの挙動の解析および組織再構成能の評価、を目標とした。 平成23年度は主に(1)の項目について検討した。未分化ヒトES/iPS細胞を胚様体と呼ばれる細胞塊として浮遊培養した後、特定条件下で付着培養すると、7週から16週程度で成熟骨格筋マーカーであるミオシン重鎖II型を発現した。この条件下では神経系列細胞や心筋系列細胞などの高率な混入がみられるが、胚様体を解離し、特定条件下で再培養を行うことで、間葉系細胞が選択的に誘導可能であった。この細胞集団は、間葉系幹細胞マーカーであるCD73, CD105, CD166およびCD29を一様に発現していることに加え、骨格筋前駆細胞マーカーのひとつであるCD56を強発現しており、最終的にin vitroで骨格筋ミオシンとジストロフィンを発現する多核成熟筋管へと分化した。 平成24年度はそれらの細胞を用いて主として(2)の項目について検討した。これらの筋原性間葉系細胞は免疫不全マウスの傷害筋内に移植すると、in vivoで観察期間6ヶ月にわたり安定して生着し、マウス骨格筋線維にヒト蛋白を発現した。移植された細胞の一部は筋衛星細胞と同様にPAX7を発現し基底膜直下に存在し、二次的筋傷害に引き続いて再増殖し、持続的な筋修復を行いうることが示され、今後の骨格筋再生医療への応用が期待できる結果であった。
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