研究概要 |
本年度は健常児における尿中骨吸収マーカーであるI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)の測定を行い、生後1ヶ月から1歳までの日本人健常乳幼児のNTX値の推移について解析し、過去の欧米からの報告(Lapillonne et al. Pediatrics 2002;110;105-109)と同様に月齢の進行とともに徐々に低下する傾向があることがわかった(生後1ヶ月(n=34):3482±799.6, 生後3-4ヶ月(n=26):2223.4±541.2,生後6-9ヶ月(n=16):1801.9±489.9,生後10-12ヶ月(n=24):1572±589.5)。 生後1歳までの骨形成不全症患児において軽症のI型患児と月齢を合わせた健常児の尿中NTX値を比較検討したところ、オーバーラップするところが認められたが、健常児と比べてI型患児において有意に尿中NTX値が低い事が分かった(健常児:2168.5±613.0, 骨形成不全症患児:1447.6±561.3, p<0.001)。 骨形成不全症に関する遺伝子解析については当初の年間20例という目標にはやや及ばないものの16名についてI型コラーゲン遺伝子(COL1A1,COL1A2)の解析を行い、このうち11名に遺伝子変異を認めた。10名はCOL1A1遺伝子(遺伝子発現の減少する量的な変異6名、コラーゲンの構造が変化する質的な変異4名)、のこりの1名がCOL1A2遺伝子の質的な変異であった。また成人例ではあるが昨年度に報告されたV型の骨形成不全症の原因遺伝子であるIFITM5遺伝子の既報の遺伝子異常を1名に同定した。
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今後の研究の推進方策 |
本年は研究の最終年度となるため遺伝子解析依頼を受けた患児及び当院に紹介となった患児の臨床情報や尿中骨吸収マーカーの値について検体数を増やしていきながら、健常児との比較検討を行っていき、骨形成不全症患児を診断しうるバイオマーカーとなり得るかどうかの統計的な解析を行う。そしてバイオマーカーとなり得る場合、判定に適切な月齢及びおよび閾値の設定を最終的に行う。 骨形成不全症に関する遺伝子解析については昨年までの2年間と同様日本全国の医療機関から遺伝子解析依頼を受け、解析を進めていく。昨年度から本年度にかけて新たにBMP1,TMEM38B,WNT1といった新たな常染色体劣性遺伝形式の原因遺伝子や常染色体優性遺伝形式のV型の原因遺伝子であるIFITM5遺伝子が同定されているため、昨年度末までに解析を行った者のうち遺伝子異常の認められなかった者について、これらの遺伝子解析を行い、他の骨形成不全症との骨吸収マーカーの相違などについて検討する。 これらのデータを元に骨形成不全症におけるgenotype-phenotypeの関連性と尿中骨吸収マーカーとの関連性を検討したい。
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