研究課題/領域番号 |
23791179
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
北村 明子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10448318)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / キャプチャー・リシークエンス |
研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は、慢性で難治性の経過をとり、多様な臓器に障害を引き起こす全身性自己免疫疾患である。特に、ループス腎炎はSLEの主要な合併症であり、進行例では末期腎不全に至る。SLEは遺伝要因を含む多因子によって発症が規定されていると考えられ、従来の研究から疾患感受性に関与する免疫機能分子の遺伝子多型が数多く同定されてきた。しかし、いずれの遺伝子多型も疾患発症への寄与は決定的ではなく、未だSLEの遺伝的素因の全貌は明らかではない。 以上の背景から、本研究では、近親婚歴を有し、遺伝要因が明らかなSLE大家系を対象に、ポジショナルクローニングおよびエクソンキャプチャー・リシークエンス解析を適用し、SLE責任遺伝子の同定を目指している。この研究の成功は、免疫システムの過剰活性化に起因するSLEの病態の本質的な理解のみならず、自己免疫性腎炎の発症機構について新たな概念を創出できる可能性がある。 これまで、両親が近親婚の4名の同胞のうち3名がSLEと精神疾患を発症した極めて稀な家系を対象にゲノム解析を行い、疾患遺伝子座(FSLE2、LOD値2.5)の同定に成功している。当該年度は、FSLE2(1.1Mb)領域の全エクソンをキャプチャーした後、高速シークエンサーを用いて網羅的に変異検索を行った。現在、検出された多型リストの中から、(1) depth 20以上、(2) 変異アレルの頻度が0.8以上のホモ接合体、(3) dbSNP等に登録のない新規多型、(4) エクソン内に存在しアミノ酸変異を伴う多型あるいはスプライシング異常を伴う多型、を条件に、候補となる多型を抽出している。 また、SLEの家族症例の調査も継続しており、新たに近親婚歴を有するSLE家系を見出した。現在、検体収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、交付申請書に記載した研究計画に従い、FSLE2(1.1Mb)領域の全エクソンをキャプチャー後、高速シークエンサーを用いて網羅的に変異検索を行った。現在、検出された多型リストの中から候補となる多型を抽出しており、当初の計画通りに研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
【候補遺伝子の同定】 多型リストの中から既知の多型を除外した後、罹患同胞が共有し、非罹患同胞が共有しない多型を選別する。選別された多型が健常コントロールにおいて1%以下のアレル頻度であることを確認できたものをrare variantとして候補の遺伝子変異と判断する。【候補遺伝子の機能解析】候補遺伝子産物の生化学的特徴を明らかにするとともに、変異がその分子機能を変化させるメカニズムを解明する。候補遺伝子の遺伝子改変マウスを樹立し、遺伝子機能を個体レベルで検討することで、候補遺伝子がどのようにSLEの病態に寄与しているかについて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、候補となる原因遺伝子の遺伝子改変マウスを作製するため、遺伝子工学関連試薬、細胞培養関連試薬、及び実験用マウス購入費を計上する。また、候補分子について生化学的な解析を行うための各種酵素・試薬を計上する。本研究成果を国内および国際学会で発表するための旅費と、論文発表するための論文投稿費を計上する。
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