研究課題/領域番号 |
23791182
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山本 雅樹 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20571037)
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キーワード | GLP-1 / 視床下部室傍核 / 血中カテコラミン / トロンボキサンA2 / αアドレノセプター |
研究概要 |
腸管由来のペプチドホルモンとして同定されたGLP-1は、中枢神経系にも存在することが知られており、脳内GLP-1産生細胞が延髄弧束核尾側に局在し、弧束核からの上行性GLP-1含有神経線維およびGLP-1受容体は、視床下部をはじめ視床、大脳皮質にわたり広範囲に分布することもすでに明らかにされている。研究代表者らの研究室でも、麻酔ラットの脳室内に投与したGLP-1が脳内プロスタノイド依存性に血中カテコラミンを増加させることを報告した(2008)。従ってGLP-1は脳内においてはホルモンとしてではなく神経伝達物質/神経伝達調節因子として作用し、自律神経機能を中枢性に調節すると推測されるが、これらGLP-1の作用とプロスタノイドのような脳内生理活性物質との相互作用に関する詳細な作用機序についてはいまだ明らかではない。 延髄弧束核のノルアドレナリン(NA)含有神経細胞にはストレス情報がさまざまな求心性神経路を経て入力し、同部位から投射する視床下部室傍核(PVN)におけるNA遊離を促進し、当該部位に局在するαもしくはβアドレナリン受容体を賦活することによって、血中カテコラミン増加の調節にも関与すると考えられている。興味深いことにα1アドレナリン受容体賦活により活性化するPLCが生成するジアシルグリセロールから、リパーゼの作用によって、種々のプロスタノイドの前駆体であるアラキドン酸を産生しうる。従ってGLP-1が脳内NA神経系を活性化するか否かを調べることはGLP-1の脳内作用機序の解明に必須である。 二年目は麻酔ラットの脳室内にGLP-1を投与し、PVNにおけるNA遊離および各種プロスタノイド(トロンボキサンA2、プロスタグランジンE2など)遊離を調べた。室傍核におけるNA遊離は増加し、トロンボキサンA2量も増加傾向にあったが、プロスタグランジンE2量はほとんど変化しないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目ではGLP-1の弧束核へのマイクロインジェクション実験が予備段階で、個体によってはかなりの出血を伴うアクシデントにみまわれたため、弧束核へのマイクロインジェクションの再現性を確保するのに予想外に時間を費やしてしまったため、一部の実験は最終年度に持ちこした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は二年目にやり残したマイクロダイアリシス実験である弧束核へのGLP-1マイクロインジェクションを行い、脳室内投与実験成績と比較検討を行う。一方脳室内投与したGLP-1による室傍核の潅流液中のプロスタノイド解析で、トロンボキサンA2量は増加傾向を示したが、興味深いことにプロスタグランジンE2量はほとんど変化しなかった。これは予想外の実験成績であるが、血中アドレナリンと血中ノルアドレナリン調節に関与する脳内部位が異なる可能性を示唆するものであり、今後の新たな研究課題の萌芽が得られた。 最終年度に予定している免疫組織化学的検討もすでに予備実験でFos発現は確認しており、順次計画を進めてゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物のラットに約30万円、マイクロインジェクション実験関連に約20万円、免疫組織化学実験の抗体等に約50万円、その他ディスポ器具等に10万円の使用を見込んでいる。
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