研究課題
SGA(Small for gestational age)性低身長患者26名を同意を得た上で登録した。患者群において、成長ホルモン(GH)投与開始前、開始後1、3、6、9、12ヶ月後の情報収集と検体採取を行った。これまで代謝内分泌学的パラメーターとして、身長SDS・IGF1・HbA1c・甲状腺機能・総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロール・各種アポ蛋白・リポ蛋白分画・アディポサイトカイン(PAI-1、レジスチン、レプチン、アディポネクチン)を測定し、各パラメーターについてGH開始後の変化を解析した。同様に免疫学的パラメーターとして、白血球分画、フローサイトメトリーによるリンパ球サブセットを測定し、GH開始後の変化を解析した。その結果、身長SDSは治療後3ヶ月から有意に改善し、12ヶ月後には平均+0.59SDの上昇を認めたが、改善に乏しい例もあった。患者群でIGF1は治療後1ヶ月から有意に上昇したが、身長の改善に乏しい例ではIGF1の上昇も認めなかった。FT4は治療後1ヶ月から有意に低下したがTSHに有意な変化はなかった。HbA1cは一過性に大きく上昇した例があったが、治療後12ヶ月では全体で有意な上昇はなかった。LDLコレステロールは治療後有意に低下し、ApoC-2・ApoEの有意な上昇とApoBの有意な低下を認めた。アディポサイトカインの解析ではPAI-1が治療後有意に低下した。また、GH治療後は白血球数・好中球数が有意に上昇し、リンパ球サブセットでは有意にTリンパ球・Bリンパ球の上昇を認めた。CD4/8比に有意な変化はなかった。これらの結果より、SGA児に対するGH治療は、成長に影響するだけでなく代謝内分泌系や免疫系の変化を生じることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでSGA性低身長患者26名を登録しており、目標の30症例の到達に近づいている。同時に年齢・性別をマッチングした対照者の登録を進めている。登録患者のGH開始後の情報収集・検体採取もおおむね予定通りできており、代謝内分泌学的パラメーター、免疫学的パラメーターについて統計学的に解析を開始している。さらに、GH反応性と遺伝子多型の関係を調べるために、GH受容体~JAK-STAT経路に関与する遺伝子群の多型解析も進行中である。
SGA性低身長患者の新規登録を進め、目標の30症例を到達する。同時に適切な対照者からの検体採取を進める。臨床情報の収集と採取した検体の代謝内分泌学的パラメーター・免疫学的パラメーターの測定は引き続き行う。同意を得られた患者については遺伝子多型解析もこれまで通り行う。新たに、保存リンパ球におけるサイトカイン遺伝子発現の解析を開始する。データが集積した時点で、患者群と対照群の比較、患者群のGH投与後の変化、代謝内分泌学的パラメーターと免疫学的パラメーターの関連、GHによる変化と遺伝子多型の関連について統計学的に解析を行う。
フローサイトメトリー・アディポサイトカイン測定・サイトカイン遺伝子発現解析・遺伝子多型解析にそれぞれ試薬が必要なため購入予定である。研究成果を学会にて発表するための旅費として使用予定である。得られたデータを統計学的に解析するためのソフトを購入する予定である。
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