研究課題/領域番号 |
23791193
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
荒巻 道彦 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (20338099)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脳室下帯 / 多極性細胞 |
研究概要 |
本研究では、マウスの大脳新皮質形成期において形成される脳室下帯に特異的に発現する遺伝子のひとつである、UNC-5 homolog D(UNC5D)遺伝子に注目してその機能解析を行うことを目的としている。脳室下帯はマウスのみならずヒトにおいても認められる。ヒトの脳室下帯は非常に大きく、それによって膨大な数の神経細胞の産生を可能にしていると考えられている。UNC5Dはその脳室下帯に特異的に発現し、神経細胞の動態に重要な役割を果たしていると考えられている。脳室下帯特異的に発現するUNC5D遺伝子はUNC5ファミリーに属する膜受容体遺伝子で、リガンドと結合することでその生物活性を示すと想定されている。しかしUNC5ファミリーの興味深い特徴は、リガンドの非存在下では発現細胞を細胞死へと導くdependent receptorとしての機能を併せ持つ点である。UNC5A、UNC5B、UNC5Cの各受容体はその細胞内シグナル伝達や細胞死を起こす分子メカニズムについて徐々に明らかにされてきている。一方、UNC5Dについては細胞内シグナル伝達のメカニズムはもとより、生物学的な役割についてもほとんど知られていない。そこで、平成23年度はUNC5D遺伝子の機能を明らかにする目的で、様々な変異体を作製し、それらをマウス胎仔に電気穿孔法の手技を用いて導入して導入細胞の動態の変化について検討した。なお、平成23年度にUNC5Dの機能の一部を明らかにした論文が報告された。この論文の結果と今までに行ってきた実験結果からUNC5Dの機能についてより多方面から明らかにする必要があると判断した。そこで平成24年度はUNC5D遺伝子の機能解析を分子メカニズムの解明に重点を置いてさらに進めていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおよそ当初の計画に沿って実験を進めた。しかし、平成23年度にUNC5D遺伝子の機能に関する論文が報告された。この報告と今までの検討結果を総合的に判断して、UNC5D遺伝子の機能解析について分子メカニズムの解明を重点に検討を重ねる方向で方針を微調整した。そのため、当初の計画に若干の変更を加える必要があったため、上記の自己評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度には、UNC5D遺伝子のdependence receptorとしての役割に注目し、実験を計画した。ただしUNC5D受容体のdependence receptorとしての機能はリガンド非存在下でのいわば不可避的な働きであり、本来の役割を反映したものではない。さらに、平成23年7月にUNC5D受容体の働きの一部を解明した報告(EMBO J.;30(14):2920-33)がなされた。申請者はこの論文の結果および従来行ってきた予備的検討から、dependence receptorの機能解析に加え、リガンド存在下で本来行っていると考えられる機能についても解析を行う必要があると考えた。そのため、平成23年度に行う予定であったマウスを用いた検討の規模を縮小し、UNC5D受容体の機能解析に用いる種々のプラスミドベクターの作製に時間を費やした。このことにより、平成23年度にマウスを用いた検討等で使用する予定であった研究費の一部を平成24年度に繰り越すこととなった。さらに、平成24年度に行う予定であった行動解析についてはUNC5D遺伝子の分子メカニズムに重点を置いた機能解析の終了後に行う方針に微調整した。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は全ての研究費を消耗品費とその他の雑費に充てる予定である。新たな研究機器類を購入する予定はない。前年度に行う予定であったマウスを用いた実験が前述の理由から一部が翌年度に持ち越された。そのため平成23年度の未使用額を平成24年度に使用することとなった。
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