研究課題/領域番号 |
23791195
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
菅沼 栄介 東海大学, 医学部, 講師 (60408010)
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キーワード | 川崎病 / LCWE / 酸化ストレス |
研究概要 |
本研究での最大の目的は、川崎病の冠動脈病変の形成への酸化ストレスの関与について死菌化した乳酸菌抽出物であるLactobacillus casei cell wall extract(以下LCWE)誘導性の川崎病類似冠動脈炎モデルマウスを用いて明らかにすることである。まず我々は前年度から酸化ストレスに対する感受性が高い(脆弱性を示す)NrF2遺伝子欠損(NrF2KO)マウスを作製するべく継代繁殖を繰り返し行い、6週令雄のNrF2KOマウスを計10匹得る事ができた。6週令の雄のWild type (WT、C57BL/6N)マウスをコントロールとし、各々のマウスにLCWEを300μg腹腔内投与して、2週間後(各n=5)と4週間後(各n=5)に安楽死し組織学的に冠動脈周囲の炎症の程度を比較検討をした。NrF2は抗酸化遺伝子の制御配列上に存在するARE配列に結合しそれらの転写を誘導することから、NrF遺伝子欠損マウスは、肝臓、肺、脳組織や毒性を引き起こすことが知られており、同様に本モデルにおいても酸化ストレス障害の惹起から冠動脈炎の悪化を示すことが予想された。 しかしこの予想と反して、NrF2KOマウスは、WTマウスと比較して有意に冠動脈炎が抑制された事が明らかとなった。さらにBDTM Cytometric Bead arrayシステム(CBA)を用いて行った血清サイトカイン解析結果でも、NrF2KO+LCはWT+LCと比較してTNF-α、IL-1β、MCP-1などの炎症性サイトカインの有意な抑制をみた。来年度以降は、この結果を裏付けるメカニズムの解明を探究する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度NrF2KOマウスの継代繁殖に予定より長い時間を費やしたが、今年度は概ね順調な進展であったと考えます。
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今後の研究の推進方策 |
NrF2KOマウスでWTマウスと比較してLCWE誘導性冠動脈炎の程度が軽減していたメカニズムを解明するために上部心臓組織からmRNAを抽出しリアルタイムPCR法を用いて、NrF2の下流遺伝子であるHeme oxygenase-1(HO-1)、NQO-1mRNAの定量的解析を行い実際に酸化ストレスがどの程度影響を与えているかを検討する。 さらに冠動脈切片を用いた免疫染色でのマクロファージ(F4/80)の浸潤の程度を評価していく予定である。またNrF2系とは相反するkeap1ノックダウンマウス(酸化ストレスに対して抵抗性を示す)を用いてこれを裏付ける結果を得るべく継代繁殖を現在行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.各種抗体;免疫染色用のマクロファージに対してはF4/80、リンパ球に対するCD-3染色 2.Real time PCR用Taqman probe;TNF-α、IL-6、MCP-1、Hmox1、NQo-1を購入 3.その他の試薬;Real time PCR(RNA抽出キッドなど)、Genetypingに必要なPCR 4.マウス関連:飼育費用は約100-120匹/1年、繁殖継代に必要な胚凍結保存、精子保存等 5.手術器具、麻酔薬、スライド 6.その他;抹殺時に使用する麻酔薬(イソフルラン)、組織染色や免疫染色で使用するスライド、スライドカバーなどがこれに含まれる。統計ソフト購入なども含む。
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