本研究の目的は、チアノーゼ性先天性心疾患における、血小板活性化の機序、特に血管内皮機能との関連、アスピリン耐性との関連、遺伝要因との関連について調べることである。 1.血小板活性化 先天性心疾患患者から採血し、P-selectinに対するmonoclonal抗体と、フローサイトメトリー(FACS caliber flow cytometer) を用いて血小板P-selectin発現を測定した。非チアノーゼ性先天性心疾患患者10名、チアノーゼ性先天性心疾患患者20名について調べた。チアノーゼ性心疾患では血小板P-selectin発現が亢進していることがわかった。2.血小板凝集能亢進と血小板活性化(P-selectin発現)の関係 上記の患者10名づつ、血小板凝集能を測定した。またずり応力下での血小板活性化を血小板機能分析計(PFA100)を用いて測定した。さらにフローサイトメトリーを用いて血小板P-selectin発現を測定した。チアノーゼ性心疾患では血小板凝集能が亢進していることがわかった。3. 血小板の活性化と血栓症発症の関係 先天性心疾患において血栓塞栓症を合併した患者について、血小板の活性化と血栓症発症の関係について調べた。先天性心疾患において血栓塞栓症を合併した患者は血小板P-selectin発現が亢進していることがわかった。4. 血小板活性化の因子 血小板活性化の因子として、短絡の有無、狭窄の有無、低酸素血症、多血症などと血小板活性化の関係を後方視的に調べた。血小板活性化の因子は、チアノーゼ、フォンタン手術であった。5.内皮機能と血小板機能の関係 先天性心疾患において内皮機能と血小板機能の関係をしらべた。血小板活性化を測定するとともに,内皮機能低下のマーカーとして血漿トロンボモジュリンを測定した。血小板活性化の機序は、内皮機能の低下であることがわかった。
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