研究課題/領域番号 |
23791199
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
深堀 優 久留米大学, 医学部, 助教 (90299488)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 重症心身障碍児 / 胃食道逆流症 / 食道インピーダンス / 胃排出能 / C13呼気ガス分析 |
研究概要 |
本研究は2年間で重症心身障碍児(重心児)30症例に対し、食道インピーダンス検査器(MII)、呼気ガス分析装置(Breath ID)を用いて胃食道運動機能検査を行い、これにより得られる新しい食道、胃運動機能異常に対するパラメータを解析することにより詳細なGERの病態が把握できるか検討する。さらに、このパラメーターを従来のpH法のパラメータと比較し、従来は分類出来なかったGERのタイプに分類出来るか検討予定とした。H23年度はGERDが疑われる重心児21症例(男/女: 7/14, 1才-23才)にMIIを施行しデータを採取した。pH法とMIIの両方で12症例がGERDと診断された。MIIのみで同定された症例は2症例、pHのみで同定された症例は1症例であった。GERDと診断された症例群: GERD(+)と診断されなかった症例群: GERD(-)で各パラメーターを解析し比較検討すると、上部食道まで達していた逆流回数は480回で、内訳は酸性356回(74.2%)、弱酸性124回(25.8%)、弱アルカリ性0回(0%)であった。GERD(+)の逆流回数はGERD(-)と比較して多く (60.8回 vs. 38.9回)、上部食道に到達している割合も高かった(56.1% vs. 28.4%)。また食道運動機能を評価するため、嚥下の際の唾液の食道内通過時間を計測し、症例をGERD(+)とGERD(-)、経口可能、経鼻胃管と噴門形成術後に分けてそれぞれ比較検討すると噴門形成術後群で延長している傾向がみられた。9症例にBreath IDを施行しデータを採取した。全症例で2つのパラメーター(T1/2, Tlag)は延長しており、重心児の胃排出能は遅延している結果が得られた。以上の成果を計3回国内外の学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は21症例の重症心身障碍児(重心児)に対し食道インピーダンス検査器(MII)を施行し、大きなトラブルもなくデータを採取することが出来た。また9症例に呼気ガス分析装置(Breath ID)を施行し、これも大きな問題なく解析可能なデータを採取することが出来た。まだ予定症例数には達していないが、MIIではpH法との比較検討を行うことが出来る程度までデータの蓄積ができた。また予定外の知見としてMIIにおいて嚥下の際の唾液の食道内通過時間を計測が食道運動機能に対する新しいパラメータとして有用である可能性が示唆された。Breath IDは計測機器の不具合等もあり、施行症例は9症例とMIIと比較するとややデータ蓄積が遅れているが、こちらも計測手技は完全に確立し順調に症例数は伸びている。H23年度分の蓄積データの解析でMIIにおいてはある程度の新しい結果が得られたので計3回国内外の学会で成果を報告することも出来た。以上の様にH23年度の研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度で重症心身障碍児(重心児)症例に対する食道インピーダンス検査器(MII)、呼気ガス分析装置(Breath ID)の測定手技はほぼ確立することが出来た。当初の研究計画では対象症例数を30例としていたが、H23年度にMIIに関しては21症例に施行することが出来たのでH24年度さらに施行症例を積み重ね、40症例を目標として症例を蓄積したい。Breath IDに関しては9症例と施行症例が目標症例数の半数に達しておらずやや予定より症例数獲得が遅れているため、H24年度は当初の予定通り30例を目標とする。H23年度はMIIのみの研究成果発表であったが、H24年度はBreath IDのデータも取り入れた解析を行い、その研究成果を英文論文として報告したい。研究成果で得た解析結果を用いて重心児の胃食道逆流症を新たに分類することで、各児に適切な治療を提供して臨床医療に還元する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度に購入した各機材の導入で重心児症例に対する食道インピーダンス検査器(MII)、呼気ガス分析装置(Breath ID)測定、データ解析の環境は整備された。H24年度は施行症例を増やしてデータを蓄積するため、各消化管機能検査機器の消耗品である食道インピーダンス検査器(MII)のディスポーザブル食道内留置カテーテル及び呼気ガス分析装置(Breath ID)の測定キット購入費用に研究費を主に割り当てる予定である。他の使用用途として、研究計画通り最終的に成果を英文雑誌に論文として掲載する際の英文校正費等とする予定である。
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