昨年度の研究で、ヒト肺由来cDNAライブラリーおよびHeLa細胞由来DNAライブラリーを導入したMDCK細胞より、RSV高感受性化したクローンが得られた。本年度はこれらの細胞を用いて、RSVのウイルス複製に関与すると想定される宿主因子のピックアップを試みた。肺cDNAライブラリー由来のクローンとして細胞番号E6、HeLacDNAライブラリー由来のクローンとして細胞番号D2Hの2つのクローンを用い、MDCK細胞をコントロールとして、東レの3D-genechipを用いたマイクロアレイ解析を行った。E6-MDCKおよびD2H-MDCK細胞それぞれの組み合わせの結果で共通した遺伝子、およびMDCKとの発現差が対数(2)で3以上であった遺伝子に注目し、いくつかの候補分子をピックアップし、恒常発現MDCK細胞をクローニングを試みたが、これに成功した候補遺伝子は7つであった。次にRSV複製への影響を検討するところであるが、感染実験の条件を検討するために改めてRSVのMDCK細胞における複製動態を調べたところ、ウイルス感染時のMOIが高い(moi=1)場合、感染後3日目におけるMDCK細胞でのウイルス力価の差はHEp-2の100分の1程度となるが、それでも10^4-5PFU/mlと十分なウイルス複製がみられた。一方でMOIが低い場合(moi=0.001)はほとんど検出限界以下で、HEp-2とのウイルス力価の差は10000倍となった。そこでこの条件で得られたクローンを用い、RSV複製を調べたところ、3つの遺伝子で10倍ほどのウイルス複製増加がみられた。またこれらの遺伝子を組み合わせて発現すると力価が上昇することも確認できた。今後はこれらの遺伝子をノックダウンしてRSV複製に影響があるか否かを検討する必要がある。研究の詳細については成果報告書を参照されたい。
|