研究課題/領域番号 |
23791206
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
嶋 晴子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (80424167)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / MOZ-TIF2 |
研究概要 |
BRPF1の機能解析MOZ-TIF2の急性骨髄性白血病発症における、MOZ複合体の構成因子BRPF1の役割を明らかにすることを目的とし、まず、BRPF1コンディショナルノックアウトマウスの作製を試みた。BRPF1flox/floxマウスとCre/ERT2マウスを交配し、tamoxifen誘導下でBRPF1が欠失する系を検討したが、確立は困難であった。そのため、BRPF1 shRNAをレンチウィルス感染の系を用いてMOZ-TIF2白血病細胞に導入し、colony formation assayを行い、in vitroでのMOZ-TIF2による白血病誘導能におけるBRPF1の役割を評価した。その結果、BRPF1 shRNA発現下では、Vector controlに比し有意にコロニー形成能が低下することが示された。また、BRPF1 shRNAの発現したMOZ-TIF2細胞では、HOXA9やHOXA10の発現が有意に低下し、HOX遺伝子の発現にBRPF1が関与することが示唆された。Ring1A/Bの機能解析MOZ-TIF2を導入されたRing1A単独ノックアウト細胞とRing1A/Bダブルノックアウト細胞での遺伝子プロファイルの違いをmRNAマイクロアレイで解析した。その結果、Ring1A単独ノックアウト細胞に比し、Ring1A/Bダブルノックアウト細胞では約200の遺伝子の発現上昇がみられた。これは、Ringをはじめとするポリコーム蛋白が様々な遺伝子の発現制御に働く転写抑制因子であることと矛盾しない結果であった。MOZ-TIF2を導入されたRing1A/Bノックアウト細胞は分化が誘導され,不死化能が失われたことから、幹細胞性の喪失にかかわる経路に注目し、細胞の分化誘導にかかわる遺伝子を抽出して、白血病幹細胞の制御メカニズムを追求したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BRPF1機能解析では、平成23年度はノックアウトマウスを作製する予定であったが、確率は困難であった。しかし、それに代わる系としてshRNA導入によるBRPF1発現抑制の系を確立し、MOZ-TIF2白血病においてBRPF1が重要な役割を果たすことを示すことができた。Ring1A/Bの機能解析では、平成23年度の研究計画はMOZ-TIF2を導入されたRing1A単独ノックアウト細胞とRing1A/Bダブルノックアウト細胞での遺伝子プロファイルの違いをmRNAマイクロアレイで解析することであったが、計画通りに達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
BRPF1機能解析MOZ白血病細胞および、BRPF1 shRNAの発現したMOZ白血病細胞でChIP assayを行い、MOZ白血病におけるHox遺伝子制御機構を明らかにする。Ring1A/B機能解析遺伝子プロファイルの違いから分化誘導にかかわる遺伝子を抽出する。着目した遺伝子の強制発現もしくは発現抑制の系を用いて、白血病幹細胞制御にかかわる新たな遺伝子・経路を見出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
BRPF1機能解析ChIP assay用のプライマーや試薬に使用する。また、MOZ-TIF2白血病細胞およびBRPF1 shRNAの発現したMOZ白血病細胞作製に必要なマウスやレンチウィルス感染に必要な試薬の購入にあてる。Ring1A/B機能解析着目した遺伝子のプラスミド作製、その遺伝子の意義をin vitroおよびin vivoで評価するため、マウスの購入・維持、培養関連の試薬に使用する。得られた成果を発表するための学会参加費・論文発表費用にも一部をあてる。
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