研究課題/領域番号 |
23791209
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研究機関 | (財)先端医療振興財団 |
研究代表者 |
草川 森士 (財)先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (80462802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / ヒト間葉系幹細胞 / 心筋分化誘導因子 |
研究概要 |
申請者は、平成23年度からの科学研究費補助金を受け、その研究課題のもとに、ヒト心筋分化誘導因子の同定に向けた研究に取り組んできた。今年度は、ヒト細胞の培養法確立、さらにヒト細胞を心筋細胞へ分化誘導させる方法の検討を行い、また、それらと並行して、心筋細胞への分化誘導因子を同定するための実験系確立を行った。 本研究では、心筋細胞への分化能を持つヒト細胞として、ヒト間葉系幹細胞、ヒトiPS細胞の利用を想定しているが、これらの幹細胞は株によって分化能などの特性が異なることが知られているため、実験に適した(ここでは分化能の高い)細胞の選択は今後の研究を左右する重要な課題となる。そこで、まず京都大学から提供されているヒトiPS細胞株2株について、フィーダー細胞無しでの安定した培養法を確立し、続いて心筋細胞への分化誘導法を検討した。心筋細胞への分化誘導法は、他研究グループの手法を参考にし、複数の方法を検討した。その結果、接着培養にActivin A, BMP4, DKK1といったサイトカインを添加する方法で、比較的短期間(10日前後)でiPS細胞が心筋細胞へ分化することを確認できている。 一方、心筋細胞分化誘導因子の同定に向けた研究として、心筋分化誘導因子のスクリーニングに利用できる細胞の作出を行っている。まず、心筋細胞のマーカー遺伝子であるαミオシン重鎖(αMHC)のプロモーター領域を、市販のヒトゲノムDNAからPCRで増幅・単離し、プロモーターレスの 緑色蛍光蛋白遺伝子(GFP)を持つプラスミドにサブクローニングした。このベクターをヒトiPS細胞に導入し、心筋細胞への分化誘導を行ったところ、分化に伴ってGFP蛋白が発現してくることを確認できた。今後、複数のiPS細胞株、間葉系幹細胞株にこのベクターを導入し、安定発現株を単離していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト幹細胞の培養・心筋への分化誘導法の確立に関する研究は、現在、ヒトiPS細胞を用いて順調に進められている。しかしながら、当初使用する予定であったヒト間葉系幹細胞ではまだ実験が行えていないため、次年度は複数のヒト間葉系幹細胞についても、培養法、分化誘導法確立を進めていかなければならない。一方、心筋細胞分化誘導因子の同定に関しては、前述の各種幹細胞の分化誘導法が完全に確立していない状況のため、網羅的遺伝子解析などによる分化誘導因子の探索がまだ行えていない。その代替案として、心筋分化誘導因子のスクリーニングに利用できる細胞の作出を進めているが、こちらは順調に進んでいる。今後作成していく安定発現株を利用して、心筋細胞分化誘導因子の探索を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞の分化誘導法については、今後さらに分化効率を上げるための工夫を加えていくと共に、分化しやすい細胞株の選別に努めていく。また、ヒト間葉系幹細胞についても同様に進めていく。心筋分化誘導因子のスクリーニングに利用できる細胞の作出については、今後、複数のiPS細胞株、間葉系幹細胞株にベクターを導入し、安定発現株を単離していく。さらに、通常の発現ベクターに替わるものとして、高発現効率が期待されるレンチウイルスベクターの作成も進めている。また、これらと並行して、心筋細胞への分化誘導前後における網羅的発現遺伝子解析などを行うことによって心筋分化誘導因子の探索を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用は、前年度と同様に細胞培養の為の培地、サイトカイン、血清、ディッシュ等の消耗品、さらには、各種プラスミドベクター作成のための試薬類が中心となる。また、情報収集を目的として、国内の学会へ一度参加する予定であり、その出張のための旅費として使用する予定である。
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