研究課題/領域番号 |
23791210
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
井上 麻由 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (40596920)
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キーワード | 多能性幹細胞 / 体性幹細胞 / レクチン / 品質評価 / 再生医療 |
研究概要 |
本研究では多能性幹細胞であるヒトES細胞、iPS細胞ならびに体性幹細胞である主として間葉系幹細胞について、細胞表層糖鎖を網羅的に解析するレクチンアレイ技術による糖鎖プロファイリングを進めている。25年度は、多能性幹細胞のもつ未分化性ならびに分化特性による特異的なレクチンの抽出を行った。レクチンアレイデータを元に統計的解析を行い、まず未分化特異的なレクチンを数種見出した。これは分化誘導後の残存する未分化細胞の存在の有無の判断ならびに除去することを目的とする。どの程度の未分化細胞残存で検出可能かの定量検証ならびに、細胞除去のための細胞選別技術を進めている。 さらに体性幹細胞は様々な組織から樹立可能であり、ヘテロな集団であり、分化特性も異なる。これまで糖鎖プロファイリングを行った細胞について、間葉系幹細胞の代表的な分化指標となる脂肪、骨、軟骨分化誘導を行い、各分化度の定量を行った。その分化特性評価と糖鎖プロファイリング情報をバイオインフォマティクスで解析をして関連性を調べた。その結果各分化特性と相関するレクチンの存在が明らかとなった。さらにその相関性を確証するため、得られたこれらのレクチンで細胞を選別して分化誘導を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多能性幹細胞は、ライン間で分化特性が異なることが知られている。これまで糖鎖プロファイリングを実施した各細胞について、分化特性について詳細な検討を進めた。特に継代に伴い、ゲノムレベルでの変化(エピゲノム修飾、ゲノム変異等)が起こっていることがわかってきており、その変化による特性、特に分化能への影響について検証を続けている。その過程における糖鎖情報も蓄積してきた。細胞の品質評価において、これまで以上に多面的な情報が得られてきており、今後これらの情報をいかに統合していくかが重要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、多能性幹細胞での未分化特異的レクチンの選定ならびに各分化特性に応じたレクチンの同定を行うことができた。そこで、これらのレクチンを用いてヘテロな細胞集団から効率的に目的細胞を選別する方法の確立にむけた研究を進めていく。さらにそれを効率的な分化誘導法の開発へと繋げていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
様々な細胞に対して、これまで得られた糖鎖情報の解析と分化能、エピゲノム解析を総合的に評価するバイオインフォマティクス解析の基盤の構築を行うことを今年度集中的に行った。そのため予算として計上していた糖鎖解析用チップの購入費など物品費の使用が少なくすんだため。 細胞評価の基盤が構築され、今後これらの解析の有効性を検証してく必要がある。すでに解析用の細胞を準備できており、これら解析に必要となる物品費の購入に使用する。またインフォマティクス解析をさらに進めるための委託費用として使用する。その他、培養に必要な培地、試薬類、さらに培養器具などの消耗品に使用していく。
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