研究課題
研究代表者らはバーキットリンパ腫 (BL) において特異的に発現する遺伝子としてZinc Finger型タンパク質をコードするZNF385Bを同定したが、その発現や機能は不明であった。まず、ヒト正常組織における発現を解析したところ、ZNF385Bは造血組織においてはリンパ節、脾臓、扁桃に限定して発現しており、免疫染色により胚中心のB細胞において発現していることが示された。胚中心B細胞の遺伝子発現のデータ解析からはCXCR4陽性のcentroblastに特異的に発現していることがわかった。次に、薬剤依存的にZNF385Bを発現誘導可能なB細胞リンパ腫細胞株を作成した。最も長いアイソフォーム (IF-) 1がアポトーシスを誘導するのに対し、N末のZinc Fingerドメインを欠くIF-2/3はBCRやCD20架橋刺激によって誘導されるアポトーシスを抑制した。免疫沈降法および酵母ツーハイブリッド法により、いずれのIFもp53と直接結合することが示された。p53転写産物の発現を解析したところ、IF-1の発現によってアポトーシス促進分子であるPERPおよびFAS/CD95の発現の上昇が示され、ZNF385Bは成熟B細胞においてp53と結合し、FAS/CD95, PERPの転写活性を変化させることでアポトーシス制御に関与していることが示された。さらに、各アイソフォームの発現を解析したところ、正常リンパ組織ではアポトーシス抑制的なIF-2/3が高発現しているのに対し、BL細胞株ではアポトーシス促進型のIF-1が高発現していた。腫瘍においてアポトーシス促進型のIF-1が高発現であることは腫瘍化の観点から不利とも思われるが、BLの多くでp53のドミナントネガティブ変異が起きており、IF-1の発現によりアポトーシスが誘導されて死ぬべきB細胞クローンが腫瘍化している可能性が示唆された。
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Eur J Immunol
巻: Vol.42, No.12 ページ: 3405-3415
doi:10.1002/eji.201242530