研究概要 |
III型ナトリウム‐リン酸(Na+/Pi)共輸送担体であるPit-1/Slc20a1は、ユビキタスに発現しており、無機リン酸の細胞内への輸送に関わる共輸送担体であるが、その機能については不明な点が多い。研究者らは細胞外無機リン酸応答性の分子機序について解析を行い、Pit-1が細胞外無機リン酸応答性に関与すること、さらにリン酸利尿因子であるFGF23により惹起されるシグナルと細胞外無機リン酸シグナルが、PiT-1とFGF受容体(FGFR)を介して下流のシグナルを共有することを明らかにした(Yamazaki M. et al. J Cell Biochem, 2010, Kimata M. et al. Bone, 2010)。リン酸トランスポーターであるPit-1を介するシグナル伝達にリン酸の細胞内流入が必要であるのかという点や、FGFRとの間に介在する分子機序が興味の持たれるところであり、はじめにこの点について、野生型ヒトPiT-1発現ベクターを構築し解析を行った。ヒト胎児腎臓由来細胞株であるHEK293細胞を使用し、導入した野生型hPiT-1の発現を確認したところ、糖鎖付加などによる翻訳後修飾を受け、より成熟した分子として形質膜に発現していることが確認できた。また、RIを用いたPi uptake assayにより野生型hPiT-1が機能的に発現していることも確認した。さらに、リン輸送能を欠くPiT-1変異体hPiT-1[S128A] (Beck L, et al. J Biol Chem, 2010)発現プラスミドを構築し、Pi uptake assayによりhPiT-1[S128A]が予測通りリン酸輸送能を欠いていることを確認した。今後、リン酸輸送能を欠くこの変異体が細胞外無機リン酸シグナル応答性に与える影響について検討する予定である。
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