早産児における気管支肺異形成(BPD)発症の予測に、内因性の一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)産生を反映する生体マーカーであるカルボキシヘモグロビン(CO-Hb)、メトヘモグロビン(Met-Hb)の変動が利用可能であるかどうかを検討した。以下に本年度の研究成果を示す。 (1)在胎32週以下で出生した早産児のうち、中等度~重度BPDを発症した児は生後7日前後のCO-Hb値が軽度BPDまたはBPDを発症しなかった児と比較して有意に高値であった。また、尿中advanced oxidation protein products(AOPP)、8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)などの酸化ストレスマーカーも中等度~重度BPD発症児では高い傾向を示した。出生後早期のCO-Hb値上昇は酸化ストレスによるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)誘導を反映しているものと推察され、中等度以上のBPD発症を予測する生体マーカーとして有用である可能性が示唆された。 (2)在胎32週以下で出生した早産児におけるMet-Hb値はBPD発症の有無による有意差を生後7日前後、28日前後いずれにおいても認めなかった。また、血中・尿中NO代謝物(NO2-/NO3-)、血中ADMA( asymmetric dimethylarginine: 内因性のNO合成阻害因子)を同時に測定したが、BPD発症の有無による有意差を認めなかった。 (3)BPD発症リスクの高い超早産児における栄養面の評価を行った。出生7日前後から修正40週まで経時的に濾紙血C5-OH、尿3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIVA)をタンデムマス質量分析法、ガスクロマトグラフィー質量分析法にてそれぞれ測定し、わが国の低出生体重児用調整粉乳で主に保育される超早産児では潜在的なビオチン欠乏症が起こりやすいことを示した。
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