研究課題
本研究課題の最終目標は、周産期低酸素性虚血性脳症(HIE)に対し、理想的な幹細胞源である骨髄単核球および骨髄間葉系幹細胞による治療法を開発することである。今年度は、昨年度治療効果を確認できた臍帯血幹細胞を用いた治療に関してのさらなる行動評価、および、骨髄単核球(BM-MC)/骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)投与後の動態に関して検討した。周産期HIEモデルは、国際的に汎用されている Rice-Vannucci モデルを用い、ラットの新生仔で作製した。凍結保存した臍帯血を解凍し、低酸素虚血負荷6時間後に、1×107個の細胞を腹腔内投与した。低酸素虚血負荷後2週間後に行った Catwalk XT による歩行解析では、患側の麻痺が臍帯血幹細胞投与により改善することがわかった。BM-MCに関しては、生後3週齢のラット大腿骨および脛骨から採取した細胞を、Ficoll法を用い単核球分画に分離した。BM-MSCは、BM-MCからの培養により得た。BM-MSC、あるいは、BM-MCを細胞膜のみに染色される蛍光色素(DiR)でラベルし、低酸素虚血負荷した生後7日齢のラットの外頸静脈から1×105個投与した。その後の体内動態を4週間後まで経時的にIVIS Imaging System にて評価したところ、両細胞とも投与後2日をピークに、肝臓を中心に多臓器において検出され、その後徐々に減少した。BM-MSCでは、肺への集積も多く認められた。両細胞とも脳内では検出できなかった。また、観察期間において死亡したラットはいなかった。
3: やや遅れている
昨年度、ラット骨髄幹細胞採取の安定した系を確立するのに予定よりも時間がかかり計画が遅れてしまったが、その遅れを未だ取り戻せていない。また、本研究での細胞投与方法は、より臨床応用しやすい静脈内投与を選択しているが、その確立に予定より時間がかかってしまった。
今年度は、確立されたモデル、細胞採取/調製/培養、投与方法を用い、骨髄単核球による周産期HIEに投与する治療効果を検討する。細胞死を含む各種マーカーの動きを免疫組織学的に確認し、さらに、行動評価にて学習障害、運動障害の改善を確認する。また、骨髄間葉系幹細胞に関しても同様な検討を行う。
当初の予定の通り、実験動物、抗体などの免疫関連試薬、細胞培養に使用する薬品などに用いる。また、血管新生を評価するために、他の研究課題との共用設備として、2次元画像レーザー血流計の購入を検討している。その際は、本年度の予算の一部を充てる予定である。
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