研究概要 |
未熟児網膜症(ROP)の発症・重症化と遺伝子変異・多型についての関連を明らかにするため、ROPが重症化した、在胎29週5日で出生した一絨毛膜二羊膜双胎の2児に対して検索を行った。検索した遺伝子は文献的にROPの重症化との関連が示唆されているNorrie disease protein (NDP), frizzled 4 (FZD4), low-density lipoprotein-related protein 5 (LRP5), Tetraspanin 12 (TSPAN12)の各遺伝子について行った。LRP5で複数のsynonymous polymorphic mutationを認めたが、各遺伝子とも既知・新規の遺伝子変異は認めなかった。そこでROPの重症化ともっとも関連が深いVascular endothelial growth factor (VEGF)について、既知の遺伝子多型の検索を行った。検索を行った遺伝子多型は-1498T>C, -1154G>A, -643C>G, -7C>T, 936C>T, そして1612G>Aについて直接シークエンス法を用いて検索を行ったところ日本人新生児のROP発症の危険因子と報告されている936C>Tのヘテロの遺伝子多型を両児に対して認めた。両児に関してはROP発症・重症化の危険因子として臨床的背景として双体間輸血症候群や、出生後の低血圧、出生後の長期の酸素投与、輸血やエリスロポエチン(EPO)の投与など多彩な危険因子が存在したことから、ROPの重症化を遺伝子多型単独の要因に帰することはできないが、ROP重症化の危険因子としてVEGFの遺伝子多型の存在が重要であることを示唆する貴重な症例と考えられ、今後さらに他の血管新生調節に関与する神経軸策因子やEPO遺伝子多型の関与を検索する予定である。
|