研究概要 |
神経軸索誘導分子として既知の因子のうち、エリスロポイエチン(EPO)に着目し、EPO遺伝子プロモーター領域の一塩基多型であるrs1617640(C/A)アレルA頻度の増加とROPの発症の関連を検討した。目的はEPO遺伝子rs1617640(C/A)アレルAの正常新生児における頻度を確認し、早産児においてROP発症との関連を明らかにすることである。 対象は正常新生児50例および在胎週数32週未満のROP 44例(中央値:在胎27週、出生体重838g)と非ROP 53例(中央値:在胎29週、出生体重1,158g)。ROPは光凝固療法を要した症例と定義した。遺伝子解析は臍帯血・末梢血・頬粘膜より採取したゲノムDNAを用いてPCR法およびRFLP法にて行った。1) 正常新生児のアレルAの頻度を確認した。2) 早産児において、臨床背景、アレル頻度、ジェノタイプ頻度につきROPおよび非ROPの2群間で単変量解析行い、リスク因子を求めるため多変量解析を行った。 正常新生児のアレル頻度はアレルC:17%、アレルA:83%であり既存の報告と差はなかった。ROPと非ROPの2群間でアレルA頻度(ROP:78%、非ROP:82%)、ジェノタイプ頻度(ROP:CC9%/CA25%/AA66%、非ROP:CC4%/CA28%/AA68%)ともに有意な差はなかった。ROPと非ROPの臨床背景では、単変量解析にて妊娠高血圧症候群、在胎週、出生体重、アプガースコア、呼吸窮迫症候群、輸血、ヒト遺伝子組み換え(hr-)EPO投与、酸素投与日数、慢性肺疾患がROPで有意に多く、多変量解析行ったところhr-EPO投与がROP発症の独立したリスク因子として抽出された。ROP発症には内因性にEPO濃度を上昇させるEPO遺伝子多型ではなく、未熟児貧血の治療薬として外因性に投与されたhr-EPOと関連があることが示唆された。
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