研究概要 |
1.子宮内胎児発育遅延(IUGR)児および子宮内で正常発育した新生児(AFD児)のSirt1遺伝子・VEGF遺伝子発現の検討1) Sirt1遺伝子発現の検討:ヒト胎盤RNAから逆転写反応を行い、胎盤由来cDNAを作成した。そのcDNAを用いてSirt1遺伝子のPCRを行っている。今後、対象の胎盤でのSirt1遺伝子発現の有無につき確認していく。2) VEGF遺伝子発現の検討:ヒトIUGR児41例(中央値:在胎32週、出生体重1234g)をIUGR群、AFD児44例(中央値:在胎32週、出生体重1956g)を対照群とし、臍帯血からDNAを抽出し、これら二群間において、VEGF遺伝子型を比較した。遺伝子型頻度は、-1498T/CのCCがIUGR群で有意に少なく(IUGR群:2.4%、対照群:15.9%、p=0.03)、-634C/GのCCがIUGR群で有意に多かった(IUGR群:34.1%、対照群:13.6%、p=0.03)。VEGF-1498T/C多型と-634C/G多型は、IUGRの発症と関連している可能性があることを明らかした。2. IUGR児およびAFD児の発育やメタボリック症候群関連血液検査値のコホート調査IUGR児(n=5)およびAFD児(n=10)で生後4から6か月時のBody Mass Index(BMI)と脂質検査値を比較した。出生時はIUGR児のBMIは、AFD児に比して低値であったが、生後4から6か月時では、BMI、脂質検査値(T-cho,F-cho,HDL, LDL, HDL/LDL比, TG, FFA)に有意な差はなく、正常値を呈していた。以上より、IUGRの発症には少なくともVEGF発現が関連することを証明した。IUGR児は生後6か月までにBMIはキャッチアップするものの、脂質異常を呈さない可能性がある。
|