研究概要 |
1.子宮内胎児発育遅延(IUGR)児および子宮内で正常発育した新生児(AFD児)のSirt1遺伝子・レニン・アンジオテンシン系(RAS)遺伝子発現の検討 1) Sirt1遺伝子発現の検討:ヒト胎盤RNAから逆転写反応を行い、胎盤由来cDNAを作成した。そのcDNAでGAPDHの発現を確認した。SIRT1のプライマーセットを作成し、PCRを行った。目的の産物と思われる約340bpのバンドが得られた。しかしながら、非特異産物も多いことから、PCR条件の調節を行っている。 2) RAS遺伝子発現の検討:ヒトIUGR児92例をIUGR群、AFD児101例を対照群とし、臍帯・臍帯血・頬粘膜からDNAを抽出した。ACE rs4340(I/D)、AGT rs699(C>T)、AGTR1 rs5186(A>C)をPCR法・RFLP法・直接シークエンス法を用いて決定した。RAS遺伝子多型の遺伝子型の頻度では、AGT rs699 TT遺伝子型がIUGR群で有意に高かった(IUGR群:4.4%、対照群:0%、p=0.03)。多変量解析を行った結果、AGT rs699 TT遺伝子型はIUGR発症の独立した危険因子であった。 2. IUGR児のメタボリック症候群関連血液検査値のコホート調査 IUGR児およびAFD児で生後4~6か月時、生後7~9か月時のBody Mass Index(BMI)と脂質検査値を比較した。出生時はIUGR児のBMIはAFD児に比して低値であったが、生後4~6か月、生後7~9か月時では、BMI、脂質検査値(T-cho,F-cho, HDL, LDL, HDL/LDL比, TG, FFA)に有意な差はなく、正常値を呈していた。 以上より、IUGRの発症にはRAS遺伝子のAGT rs699 TT遺伝子型が関連することを証明した。IUGR児は生後9か月現在では脂質異常を呈さない可能性がある。
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