研究課題/領域番号 |
23791227
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
栃谷 史郎 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | GABAA受容体 / 大脳皮質 / 神経前駆細胞 / 催奇形性 |
研究概要 |
本研究ではGABAA受容体を介した大脳皮質神経前駆細胞の形質制御の内在的機構を解明し、GABAA受容体標的薬による神経前駆細胞形質制御の攪乱はどの時期にどのような分子機構で起こるか、撹乱の結果は中枢神経系にどのような器質的変化をもたらすかを解明することを目的とし研究を進めた。その第一歩として、平成23年度においてはGABAA受容体標的薬が神経前駆細胞のapical progenitor(AP: Pax6陽性)からbasal progenitor(BP:Tbr2陽性)という変化を促進するという仮説を検討するため、妊娠10日目から出生までの様々な妊娠時期のマウスにGABAA受容体作動薬と拮抗薬を投与し、胎児の大脳皮質原基におけるPax6陽性細胞、Tbr2陽性細胞の出現頻度の変化を免疫細組織化学染色により定量的解析を行った。その結果、作動薬投与群ではPax6陽性細胞の減少と、Tbr2陽性細胞の増加が、GABAA受容体拮抗薬投与群ではその逆の現象が観察された。エタノールはGABAA受容体を標的とする化学物質であるが、胎児期にエタノールに曝露された胎児では小頭症が起こることが知られる。このメカニズムとしてエタノールが胎児脳の神経前駆細胞におけるGABAA受容体を刺激することで、神経前駆細胞の不適切なタイミングでのAPからBPへの変化が促進され、神経前駆細胞が十分に増えることができないというメカニズムを基礎としていることが示唆された。さらに層特異的なマーカーによる解析を行い、GABAA受容体を介した神経前駆細胞の形質制御の攪乱がどのような器質的変化をもたらすか検討している。また、培養神経前駆細胞へGABAA受容体作動薬、拮抗薬を投与する実験も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度においては1. GABAA受容体標的薬の神経前駆細胞の形質変化に対する影響とGABAA受容体標的薬の催奇形性に対する感受性期の組織学的解析 、2. マウス大脳皮質原基培養神経前駆細胞を用いたGABAA受容体標的薬による神経前駆細胞の形質変化への攪乱的作用の細胞生物学的解析、3. GABAA受容体標的薬による催奇形性の基礎となる大脳皮質原基の器質的変化の解析を行う計画を立て、1に関してはほぼ完了し、2、3においてはまもなく解析を終えようとしているため、予定通りに計画を進めることができたといえる。ひとつ、計画時に予想できなかったこととしては、1,3についてこれまでに得ている結果を確認するために、これまでに使用してこなかったGABAA受容体亢進薬を使用した実験を行う必要があると感じており、次年度に新たに計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得た結果を確認するため、これまでに使用してこなかったGABAA受容体亢進薬を使用し、平成23年度に行った解析を一部繰り返す実験を新たに計画している。それ以外は本来の計画通りに研究を進め、1.神経前駆細胞の形質制御に関与する内在的なGABAA受容体作動因子の同定、2.GABAA受容体を介した神経前駆物質の形質制御因子の量的変化の解析、3.GABAA受容体を介した神経前駆細胞の形質変化撹乱の分子機構の解析を行っていくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ本来の計画通り進んでいるため、平成23年度は主に組織学的解析と培養細胞を用いた解析をおもに行ったが、次年度は新たに生化学的解析や分子生物学的解析を開始する予定である。そのため、本来の計画に従い、必要な消耗品等を新たに購入する必要があると考えている。また、これまでに得た研究成果の一部を論文として発表する予定であり、そのための支出も必要となると考えている。
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