研究課題/領域番号 |
23791229
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朱 鵬翔 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40380216)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳性麻痺 / ES細胞 / 再生療法 / 神経前駆細胞 |
研究概要 |
小児脳性麻痺は、生後4週までに何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能障害をさす症候群である。脳性麻痺の発症率は、出生児千人に対しおよそ2人であり、小児脳障害の中で最も発症頻度が高い疾患として知られている。残念ながら脳性麻痺の根本的な治療法はなく、脳障害は生涯続くことになる。更に脳性麻痺の子供の90%以上が成人となることより、患者の介護を含めた医療費は膨大なものとなっている。従って、脳性麻痺の治療法の開発は社会的にも重要な課題と考えられる。そこで本研究はマウスES細胞から分化誘導して作成した神経前駆細胞を脳性麻痺モデルマウスに移植し、小児脳性麻痺に対する革新的な神経再生治療法の開発を目的とする。本年度はICRマウス生後6日目を用い、片側総頚動脈を永久閉塞後、1時間の低酸素負荷(hypoxia-ischemia stress)を行い脳性麻痺モデルマウスを作成した。そしてES細胞より分化誘導して作成した大脳特異的神経前駆細胞を、障害半球の脳実質に注入した。その結果open fieldを用いた行動評価では、未治療群に比して治療郡で有意な改善効果を認めなかった。更に組織学的検討でも移植した神経前駆細胞は全て死滅していた。この結果はICRマウスを用いた脳性麻痺モデルでは炎症反応が強すぎて、移植した神経前駆細胞も障害されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期の研究計画に基づき研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実験結果では、ICRマウスを用いた脳性麻痺モデル動物では、明らかな治療効果を見いだせなかった。組織学的検討では、ICRマウスの場合、障害領域での炎症反応が強いため、移植した神経前駆細胞も傷害されていることが明らかとなった。従って今年度はICRマウスではなく、免疫能が抑制されていることが知られているSCIDマウスまたはNOD-SCIDマウスを用いての検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)マウスES細胞から神経幹細胞への分化誘導:Wataya等の方法(PNAS USA.105:11796-801,2008)に従い、SFEB(serum-free floating culture of embryoid body-like aggregate)法にてマウスES細胞から神経前駆細胞への分化誘導を行う。(2)大脳特異的神経前駆細胞の単離と未分化細胞の除去: Eiraku等の方法(Cell Stem Cell 3:519-32, 2008)に従い、大脳に特異的なregional markerである FoxG1遺伝子座にVenus遺伝子をレポーター遺伝子としてノックインしたES細胞株(FoxG1::venus株)をSFEB法で神経前駆細胞に分化させた後、FoxG1遺伝子を発現しVenusの蛍光(緑色)を発している細胞をFACS Sorterにて分離する。これにより大脳特異的神経前駆細胞を単離すると同時に、未分化細胞の混入による腫瘍の発生を防ぐことが可能となった。(3)脳性麻痺モデル動物の作成と大脳特異的神経幹細胞の移植、及びその有用性の検討:SCIDマウス又はNOD-SCIDマウス生後6日目を用い、1時間の低酸素負荷(hypoxia-ischemia stress)を行い、脳性麻痺モデルマウスを作成する。そして(1)、(2)の手法により作成した大脳特異的神経前駆細胞を、脳実質に移植する。その後脳障害の程度や神経症状を定量化し、ES細胞由来大脳特異的神経前駆細胞移植により脳障害の改善効果を検討する。また移植した細胞が生着し、既存の神経組織とシナプス形成をしているかどうかを、電子顕微鏡的検索を含め、形態学的に検討する。
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