研究課題/領域番号 |
23791233
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
市川 泰広 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10555121)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 動脈管 / 胎児新生児医学 |
研究概要 |
本研究では塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を用いて内膜肥厚を促進する未熟児動脈管開存症に対する新規治療法の開発を目的である。H23年度においては以下の2つの解析を行った。1.未熟児動脈管組織を用いて器官培養を行い、bFGF の内膜肥厚促進作用を検討した。(ex vivo)bFGF が動脈管の内膜肥厚を誘導するかどうかを、ex vivo で検討する。生体内は複数の要素が混在しており、bFGF が内膜肥厚を誘導したとしても、直接の因果関係として結論できないためにまず行った。胎生21日でラットは出生するため、胎生19日のラットを未熟児として使用した。胎生19日のラットから動脈管を摘出し、リコンビナントbFGF を添加した群としない群とに分け、平滑筋培養用の培地で3日間培養後、エラスチカ染色で弾性線維を染色し解析した。bFGFを投与した群で動脈管内膜肥厚促進作用が確認できた。2.bFGF を未熟児ラットに投与し、動脈管の内膜肥厚形成の程度を検討した。(in vivo)リコンビナントbFGF の量はin vivo で他の報告で使用されている濃度を参考に体重1mg 当たり1μg を中心に濃度を4種類かえて投与した。出生後に呼吸が安定してからリコンビナントbFGF を投与し、投与後組織を固定しパラフィン切片を作製してエラスチカ染色を行い解析した。器官培養と同様に、ラット投与モデルでもbFGFによる動脈管内膜肥厚作用が観察された。以上の結果よりbFGFが動脈管内膜肥厚因子であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書にあったとおり、H23年度の研究目標である「未熟児動脈管組織を用いて器官培養を行い、bFGF の内膜肥厚促進作用」および「bFGF を未熟児ラットに投与し、動脈管の内膜肥厚形成」を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験からbFGF がラット未熟児動脈管の内膜肥厚形成を促進することが明らかになった。引き続き、bFGF 動脈管の閉鎖効果を検討する。臨床では、インドメタシンの血管収縮効果は明らかに認められるものの、腎血流の低下などの副作用のためにインドメタシンの使用を中止せざるを得ないことがある。本研究では、未熟児動脈管開存症に対するbFGF とインドメタシンの併用効果を検討することに加えて、内膜肥厚を誘導するbFGF を併用することで、インドメタシンの投与量を減量できないかを検討する。はじめに、インドメタシンの投与量をヒトの投与量から換算してもとめ、胎生19日または20日のラット新生児に腹腔内投与を行う。投与後15分、30分、1時間、3時間後に組織を固定し、パラフィン切片を作製しエラスチカ染色を行って動脈管の内腔の開存している断面積をImage J ソフトウェアで計測する。これらの実験で、十分に動脈管を閉鎖できるインドメタシンの量を決定し、その10分の1までのインドメタシンの量をbFGF と併用する際に使用する。単独では動脈管の閉鎖効果が十分ではないインドメタシンの量を用いて、リコンビナントbFGF を胎生19日または20日のラット新生児に同時に投与する。投与後時間を追って組織を順次固定し、エラスチカ染色にて内膜肥厚の程度と、開存している部分の断面積を計測し、統計処理を行う。各実験にいては6匹以上のサンプルを検討することを予定している。これらの実験により、bFGF とインドメタシンのラット未熟児動脈管の閉鎖に対する併用効果が認められ、さらにbFGF の併用によりインドメタシンの投与量を減らすことができる、という結果が得られることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学、組織病理学用の試薬類(定量的RT-PCR 試薬、プライマー作成、抗体、細胞培養培地、染色液等)等に60万円、消耗品(チューブ、チップ、フィルター、培養容器、動物手術用具、糸、針、麻酔薬等)に30万円、動物購入および管理費に20万円、学会参加、旅費に20万円、論文投稿費用に20万円を予定している。
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