まず、bFGF が動脈管の内膜肥厚を誘導するかどうかを、ex vivo で検討した。胎生19日のラットを未熟児として使用する。胎生19日のラットから動脈管を摘出し、リコンビナントbFGF を添加した群としない群とに分け、平滑筋培養用の培地で3日間培養する。その後組織を固定し、エラスチカ染色で弾性線維を染色し、bFGF による内膜肥厚形成の促進の程度を計測した。bFGFを添加した群のほうが内膜肥厚が促進された。 同様にbFGF を未熟児ラットに直接腹腔内投与し、動脈管の内膜肥厚形成の程度を検討した。(in vivo)リコンビナントbFGF を未熟児ラットに腹腔内投与し、時系列に沿って内膜肥厚形成の程度を検討した。出生後に呼吸が安定してからリコンビナントbFGF を投与し、組織を固定し、パラフィン切片を作製してエラスチカ染色を行なった。前述の方法で内膜肥厚の程度を定量した。ラットに直接投与でもbFGFは動脈管内膜肥厚を促進していた。これらの実験から、bFGFが未熟児動脈管の内膜肥厚形成を促進するという結果が得られた。 臨床では、インドメタシンの動脈管収縮効果は明らかに認められるものの、腎血流の低下などの副作用のためにインドメタシンの使用を中止せざるを得ないことがある。未熟児動脈管開存症に対するbFGFとインドメタシンの併用効果を検討することに加えて、内膜肥厚を誘導するbFGF を併用することで、インドメタシンの投与量を減量できないかを検討した。単独では動脈管の閉鎖効果が十分ではないインドメタシンの量を用いて、リコンビナントbFGF を胎生19日または20日のラット新生児に同時に投与した。インドメタシンとbFGF同時投与群のほうが内膜肥厚が促進されていた。 以上よりbFGFが未熟児動脈管の内膜肥厚形成を促進し、インドメタシンと併用でも動脈管閉鎖効果がみられた。
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