本研究はより臨床に近い条件で実験を行うため、濃厚赤血球を実験直前に作成することを計画していたが、白血球除去フィルターの発売中止、採血直後の放射線照射が院内では不可となった。これらはいずれもブラディキニンやサイトカイン産生に影響するため、研究対象を、より臨床の条件に近づけるため、期限の切れた濃厚赤血球を用いることとした。そのため、影響の強いと考えられるブラディキニンの測定を中心に行った。PS膜を用いて血液充填した場合、50.8pg/mlの基準値から、10分後に325pg/ml、20分後に274pg/ml、30分後に210pg/mlと変化した。以上から陰性荷電のない膜でも、ブラジキニン上昇が起こりうることが判明した。 そのため、以前の実験結果をもとに、透析液流量1500ml/h、ろ過流量500ml/hの条件で回路内透析を行ったところ、43.7pg/mlの基準値から、10分後に174pg/ml、20分後に173pg/ml、30分後に159pg/mlと、ブラジキニン濃度の低下を認めた。 以上から新生児の血液浄化療法に際して濃厚赤血球を用いて回路内充填を行う際には、使用する血液浄化器の種類によらず、ブラジキニンの除去を念頭に積極的な浄化が必要と考えられた。 今後は、実際の症例に対して、ブラジキニン濃度と血圧低下との関連性を調べる必要があると考えられた。
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