平成23年度、24年度の研究ではラットの脳虚血モデルを用いて「プラズマ吸入が血管新生を促進すること」について明らかにし、病理学的、機能的な評価を試みた。平成25年度には大気圧プラズマ吸入時の循環動態の変化についてさらに検討及びプラズマが生体に与える直接的な影響について研究した。 大気圧プラズマ吸入時の血中NO値の測定は血管内ではなく肝臓に刺入することでより長時間の計測を行うこと可能となった。プラズマ吸入の短期的効果として血中NO濃度の上昇と循環動態の変化を認め、既に臨床使用しているNO吸入との相違を明らかにするためNO吸入とプラズマ吸入時の血中NO濃度および循環動態について比較検討を行った。 プラズマとNOの吸入の比較ではプラズマでは約30秒で血中NO値が上昇し、NO吸入の場合にはで約10秒であり、その差は約15秒であった。吸入終了後にはどちらも血中NO濃度は緩徐に低下し、有意差は認めなかった。循環動態の変化についてもどちらもNO濃度に相関しており有意な差は認めなかった。 3年間の研究において一定期間大気圧プラズマ吸入を継続することは血管新生を促し虚血性脳症の治療への可能性が示唆された。またプラズマ吸入の短期的影響として循環動態の変化(血圧低下、心拍数増加)が認められたが、この変化はNO吸入による影響とほぼ同等であるもののその原理はまだ明らかではなく、プラズマの含有する物質や細胞レベルでの反応も含め検討することが今後の課題であると考えられた。現在虚血後脳症モデルラットに対してプラズマ治療後に血管造影による評価を行い、培養細胞のプラズマ曝露による変化についても検討中である。また今後の臨床応用を考慮すると大動物を用いた研究は必要であると考えられ、引き続き大気圧プラズマの生体に与える影響についても検討したい。
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