研究課題/領域番号 |
23791241
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 免疫部門, 研究員 (60599596)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウレアプラズマ / 絨毛膜羊膜炎 / エンドサイトーシス |
研究概要 |
わが国での早産率は約 6% である。早産児は呼吸器障害、神経障害などの合併症を伴うことがあるが、その原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。早産は感染により惹起された胎盤局所の炎症によるサイトカイン産生が子宮収縮を引き起こすことが知られている。CAM の起因微生物として Ureaplasma spp.の重要性を見出してきたが、Ureaplasma spp.はマイコプラズマ科に属するヒト病原細菌で βラクタム系の抗菌薬が無効であり、子宮内におけるサイトカインストームの抑制は困難である。大阪府立母子保健総合医療センターでの流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、わが国の周産期医療現場で最も重要な細菌感染症の一つといえる (Namba et al., Ped Res, 2010)。近年、Ureaplasma が細胞内で生存しているとの報告があるが、その細胞内増殖性については未だ議論の分かれるところである (Marques L. M. et al., BMC Microbiol 2010)。 本研究では Ureaplasma の細胞内取り込み機構と細胞内動態解析を行い、感染した宿主細胞内での Ureaplasma の挙動について調べた。Ureaplasma は感染後、宿主細胞内で核周囲に集積することが示された。クラスリンの機能阻害や siRNA の実験結果から Ureaplasma は、宿主細胞にクラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれ、一部はER や Golgi に到達していると考えられた。クラスリン依存性のエンドサイトーシスの阻害薬である CPZ が Ureaplasma 細胞内侵入の予防薬としての可能性を示す結果であったが、応用にはさらなる研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウレアプラズマの細胞への侵入メカニズムについて調べる為に、ウレアプラズマの細胞膜を蛍光ラベルし培養細胞へ感染させどのようにして細胞に侵入していくかを明らかにした。蛍光ラベルしたウレアプラズマは感染させてから0.5時間で細胞内に侵入していることが明らかになり、経時的に核周囲にウレアプラズマが集積しているのが観察された。また感染した細胞の生存率についても調べたところ、ウレアプラズマが感染した細胞はコントロール細胞に比べ細胞数が減少していた。 ウレアプラズマの細胞への侵入経路について調べたところ、ウレアプラズマはクラスリン依存性のエンドサイトーシス由来の経路で細胞内に取り込まれていることが示された。さらに、ウレアプラズマのクラスリン依存性のエンドサイトーシスによる細胞内小器官への移動について調べたところ、一部のウレアプラズマは小胞体とゴルジ体との局在が一致していた。また、クラスリンの機能を阻害するクロルプロマジンで細胞を処理した後ウレアプラズマを感染させた際に、ウレアプラズマの取り込みが抑えられているのが観察された。クラスリンの機能をノックダウンするsiRNAを用いた実験でも同様の結果が得られた。以上の結果から、ウレアプラズマは宿主細胞にクラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれ、一部は小胞体やゴルジ体に到達していると考えられる。クラスリン依存性のエンドサイトーシスの阻害剤であるクロルプロマジンがウレアプラズマ感染の治療薬としての可能性を示す結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ウレアプラズマがクラスリン依存性のエンドサイトーシスで細胞に取り込まれていたことから、初期エンドソームのマーカーであるEEA1、後期エンドソームのマーカーであるRab7やLAMP1などとの関係についても調べる。ウレアプラズマと初期エンドソームのマーカーであるEEA1との関係については免疫染色を行って調べる。さらに、後期エンドソームのマーカーであるRab7との関係についてはRab7のクローニングを行い、EGFP-Rab7を作製し、EGFP-Rab7が安定発現する細胞株を作製してウレアプラズマとの関係について調べる。さらに、電子顕微鏡レベルでウレアプラズマが細胞内小器官のどこに局在しているかについて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費使用計画は細胞内に取り込まれたウレアプラズマが細胞内小器官のどこに局在しているのかについて詳細に調べる為に、電子顕微鏡レベルで観察を行う為の準備費用、及びウレアプラズマと宿主細胞の関係について明らかにするために必要な消耗品等購入費用として102万円。 マイコプラズマ学会に参加発表、分子生物学会に参加する為の参加費及び旅費として10万円。人件費・謝金として5万円、その他諸経費として3万円使用予定である。
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